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ランボオとヴェルレーヌと(5)マチルデとの別れ

ここでは、「ランボオとヴェルレーヌと(5)マチルデとの別れ」 に関する記事を紹介しています。
(5)
 しかし、放浪の幸福感もだんだん薄れてゆく。マチルデの影がまた二人のあいだに落ちてくる。一八七二年七月二十一日、マチルデは母親といっしょにブリュッセルに向かう。ヴェルレーヌが手紙を出したからである。彼はホテルで妻と義母を迎える。久しぶりの夫婦の逢う瀬で、たちまち抱擁、涙、笑い、和解となる。マチルデが再び一緒に暮らそうと本題をもちだすと、ヴェルレーヌは口を濁して逃げてしまう。とにかく夫人たちは彼をパリに連れ帰ろうと汽車に乗せたが、国境のキエヴラン駅で乗客がみんな税関の手続きをするために下車した、その混雑にまぎれて、彼は姿を消してしまう。それがヴェルレーヌ夫妻の最後の別れであった。そのときの妻との出会いを詩人は書いている。

  ぼくはまたきみを見る 扉を少し開ける
  きみは疲れてか ベッドに寝ていた
  おお 愛に駆られた 軽やかな肉体
  きみは裸で跳ねる 泣きぬれて陽気に

 ヴェルレーヌは、マチルデと過したホテルの午後を思い出しては、甘くて苦い嘆きにひたる。しかし、それはランボオには嫌らしい泣きごとに聞こえる。喧嘩になった後など、ヴェルレーヌはランボオに捨てられはしないかと不安になる。ヴェルレーヌは書く。

  さあ 眠れ! ぼくはきみへの恐怖で眠れぬのだ

 後にランポオもまた書くことになる。──「哀れな兄きよ! きみのおかげで、幾夜つらい夜明かしをしたことか」
 その頃、ランボオは哀れなヴェルレーヌにまるで呪文をかけたように、思いのままにあやつっている。彼はまだヴェルレーヌを解放してやる、「太陽の子」の本然の姿に還元してやるという使命感を、正確にいえば、自分のまぼろしの使命感を抱いている。彼はヴェルレーヌへの手紙に書く。「ただぼくといっしょにいて、初めてきみは自由になれる。ぼくを知る前にきみはどんなだったか、思い出してもみたまえ」この頃、ヴェルレーヌがランボオについてどう考えていたか、彼はそれを「英智」のなかにほのめかしている。

  きみはもう優しくなくて役立たずだ
  きみの言葉は隠語と冷笑で死んでいる
(この項おわり)

(新日本新書『ランボオ』)

マチルダ


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