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ランボオとヴェルレーヌと(4)おお 季節よ おお 城よ

ここでは、「ランボオとヴェルレーヌと(4)おお 季節よ おお 城よ」 に関する記事を紹介しています。
(4)
 さて、アンドレ・ジルによって「暗鬱な駿馬」と呼ばれたヴェルレーヌは、マラルメによって「とてつもない通行人」とよばれたランボオのあとをついてゆく。それからの数カ月というもの、ヴェルレーヌの生活は西部劇のようにくるくると変る。ランボオを追い払う……ふたたびランボオを呼びもどす……ヴェルレーヌはマチルデと和解を試みる……ヴェルレーヌはランボオといっしょに逃げる……マチルデはヴェルレーヌを追ってベルギーにゆく……ヴェルレーヌとランボオはイギリスに渡る……ランボオが逃げだす……ヴェルレーヌはランボオを探す……ヴェルレーヌはマチルデを探す……眼のまわるようなドラマの転回である。ヴェルレーヌは絶えずマチルデとランボオのあいだに引き裂かれて揺れている。
 一八七二年七月の初め、放浪に出た始めの頃、哀れなヴェルレーヌは、家庭的束縛から解放されて身軽になり、放浪生活の面白さに心奪われて、わずらわしい重荷をみんな捨て去ったと思い込んでいた。

  おれたちは こころも動かさず
  パリに 重荷を置いてきた
  かれは かつがれた阿呆者で
  おれは どこかの微笑む姫君で……

 行方をくらました二人の詩人は、いまは信頼しあい、解放をわかちあう。

  まるで 浮かれた二人の幽霊だ……

 ランボオにとって、放浪はすでに手馴れたものである。脱出というよりはひとつの征服であった。彼にはパリに置いてくる荷物さえなかった。ベルギーでの道中では、彼も旅の悦びに浸り、緑の国のゆたかさに慰めをみいだしている。

  おお 季節よ おお 城よ
  無疵(むきず)の魂が どこにある?

  おお 季節よ おお 城よ

  だれも 逃れられぬ 幸福の
  魔法を おれは究(きわ)めたのだ

  おお 幸福よ 万歳だ!
  ゴールの鶏(とり)の 啼くたびに

  だが おれにもう望みはないだろう
  そいつが おれの生を引受けた

  あの魅惑! そいつが身も魂も捉えて
  すべての努力を 吹き散らした

 ブリュッセルでは、二人の詩人は、「桜んぼの熟す頃」の詩人ジャン・バチスト・クレマン、ジョルジュ・カヴァリエなど、コミューヌの亡命者たちとしばしば会っている。
(つづく)

(新日本新書『ランボオ』)

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