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ランボオとヴェルレーヌと(3)渇きの喜劇

ここでは、「ランボオとヴェルレーヌと(3)渇きの喜劇」 に関する記事を紹介しています。
(3)
 しかしまた同じこの頃書かれた「渇きの喜劇」では、詩人の拒否と絶望が色濃くうたわれている。

  おれたちは おまえの遠い祖先だ
  おれたちの酒倉へ降りて行こう
  そこで りんご酒や牛乳を飲むとしよう

  おれ──牝牛どもの飲む処へ行くことだ
  ……
  いつか ある 「夜」
  おれは どこか 古い町で
  こころ しずかに 酒を飲み
  こころ みちて 死ぬだろう
  おれは 耐えてきたんだから

  もしも おれの悪病が しずまって
  おれに いくらか 金(かね)ができたら
  おれは 出かけて 行こう
  「北国」か 「葡萄の国」へ
  ……
  あの森を染めるあけぼのの色のような
  湿った菫のなかで 息絶えることだ

 祖先たちは因襲的な飲料をすすめ、祖先崇拝や信仰をすすめる。パリの友人たちはボヘミヤンの飲み物、ビッテルやアブサンをすすめる。それにたいして、ランボオは精神の渇き、未知への渇き、冒険への渇きを対置して拒否する。そうしてこの詩の結びはもの悲しい。「どこか古い町」を夢みながら、「董のなかで息絶える」ことを夢みる詩人の絶望は深いのである。
(つづく)

新日本新書『ランボオ』

夕暮れ


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