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ランボオ「放浪者」

ここでは、「ランボオ「放浪者」」 に関する記事を紹介しています。




放浪者


(『ランボオ詩集』蒼樹社 1947年)
*「イリュミナシオン

さし絵
ランボオからドラエへの手紙



  放浪者        アルチュール・ランボオ 大島博光訳

 なさけない兄きだ!こんな兄きのおかげで、おれはどのくらいやりきれぬ、眠れぬ夜を過したことか!『こんな放浪のくわだてに、おれはこころから熱中したわけではなかった。おれは兄きの弱さを、おもしろがって、なぶっていたのだ。おれのあやまちで、おれたちはまた流浪の身となり、奴隷の身におちこむのか知れぬ。』兄きは、おれを不運な男、とても風変りな無邪気な男ときめて、いろいろ気をもませるような理くつを並べたてるのだった。
 おれはこの悪魔的な先生に、あざ笑いながら口答えして、窓のところへ行ってしまうのがおちだった。そうしておれは、奇妙な楽隊のよぎってゆく野のかなたに、豪奢な未来の夜のまぼろしをつくりだし、夢にえがいていた。
 こんなぼんやりした衛生的な気晴らしのあとで、おれはまたいつも、藁ぶとんのうえに、ごろりと横になるのだった。すると、ほとんど毎晩のように、眠ったかとおもえば、あわれな兄きは起きあがり、くさったようなくさい口をし、目をむきだして──たしか夢でも見ていたのだ──おれを部屋のまんなかにひきずりだし、せつない、ばかげた、たわごとをわめきちらすのだった。
 じっさい、おれは真剣に、兄きを『太陽の子』の原始の姿にかえしてやろうとひきうけたのだ。──そうしておれたちは、居酒屋に酒をのみ、街道にビスケットをかじりながら、さまよいつづけたのだ。おれはおれで、尻をすえる場所と生き方を見つけだそうと、あせりながら。

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