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ランボオ「労働者」

ここでは、「ランボオ「労働者」」 に関する記事を紹介しています。


労働者


(『ランボウ詩集』蒼樹社 1947年)
*「イリュミナシオン」

DSCF6878裸婦 太陽
佐藤忠良「太陽」




  労働者    アルチュール・ランボオ 大島博光訳

 おお、あの二月のなまあたたかい朝!季節はずれの南風が吹いて、おれたち、おろかな貧乏人どもの思い出を、みじめおれたちの青春を、またぞろ、かき立て、あふり立てるのだ。
 アンリカは、当世流行の、白と茶のごばん縞の、もめんのスカートをつけ、リボンつきの帽子をかむり、絹のくび巻きをまいていた。その格好は、まるで喪服姿よりも、もっと悲しげだった。おれたち二人は、郊外をぶらぶら、ひとめぐりした。雲がどんより垂れさがっていて、あの南風が、荒れはてた庭や、うら枯れた荒野の、いやな匂いをかき立てるのだった。
 それでも、女はおれほどには疲れぬらしかった。高い小道のうえに、先月の洪水(でみず)が残していった、水たまりのなかに、かの女は小さなめだかを見つけて、それをおれに指さすのだった。
 町の煙りと機械の騒音は、さまようおれたちのあとを、遠くまで、まつわりついてくるのだ。おお、ほかの世界、天に祝福された住み家、いこいの木かげは、どこにあるのだ!南風はまたおれに思いおこさせる、みじめなおれの少年時代のできごとを、夏の絶望を、そうして、運命がいつもおれから遠ざけてゆく、あの恐るべき多くの力と科学を。おれたちは、もうこんなけちな国では夏をすごすまい。こんなところでは、おれたちはいつまでたっても、婚約したみなしごであるにすぎないのだ。おれはもう、このおれの硬くこわばった腕に、可愛いい女をかかえこんで行こうなどとはねがうまい。
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