大島博光年譜(4−1)1942-43年
一九四二年(昭和十七年)三十二歳
二月、「偉大なる追憶のために」(詩)を「蝋人形」に発表。三月、「愛国詩について」を「少女画報」に発表。
「暗き夜のうちにひとり坐する詩人よ/われまた夜の詩人 わが夜の歌 第四の歌を書きて/われも夜に訣別を告げむとおもふ/友よ われら大なる朝を 充実の真晝を迎へむかな 真晝と夜とを綜合せむかな/新緑のうちに生の賛歌を見むかな」(四月二十三日付松本隆晴宛)
五月、「わが夜の歌――第四の歌」(詩)、「自然と詩人」(エッセイ)を「蝋人形」に発表。ヴァレリー「コロオをめぐつて(Ⅱ)」を「生活美術」に発表。六月、「詩についてのノート(1)」を「蝋人形」に発表(八月、十月連載)。六月、『国民詩 第一集』(第一書房 中山省三郎編)に「わが夜の歌」を収録。七月、「微風に寄す」(詩)を「蝋人形」に、ヴァレリー「音楽・建築・劇 ――「アムツィオ」の来歴」を「音楽之友」に発表。また同号の座談会「詩と音楽の交流」に参加。他の出席者は勝承夫、藤浦洸、菊岡久利、深井史郎、吉本明光、堀内敬三、黒崎義英。
「松本隆晴よ/君が朝にはいかなる風の吹く?/君が夕べにはいかなる星のささやくか?/友よ、すこやかなれよ/「肉体は悲し!」われは絶えず痛みて生きるは苦し」(七月十一日付松本隆晴宛書簡)
八月、「真珠」(詩)、「吉田一穂著『黒潮回帰』について」(書評)を「蝋人形」に発表。九月、「天空について」(散文詩)を「知性」に発表。
「松本隆晴よ/近代とは倦怠の時代にあらずや/ヴェルギリウス、オヴィディウスら古代の詩人らは倦怠を知らず/神々を讃へて偉大なるかな/泥にはらばえる近代の人間獣は はや空翔ぶ翼を失へり/神々は讃むべきかな」(九月一日付松本隆晴宛)
「松本隆晴よ/とく病ひより癒え、秋風に髪なびかせよ。/われもまた《ポセイドンよ、わが友に恙がなき航路を与へよ》と祈らむものを。――/ラケダイモンの野に立つシモニデスのごと立ち上がれよ。/汝はまたオルプェウスあり。/ヘブラスの河より蘇へれよ。レスボスの浜辺に――」(九月二八日付松本隆晴宛)
十一月、「ルヴェルディの言葉」(翻訳)を「蝋人形」に、「詩と音楽について」(評論)を「音楽之友」に発表。
「朽葉こがねいろに窓を染め、/太陽は影の秘密を射しつらぬくに、/『秋の嗟嘆』は蒼穹に昇る!/黄金色なる朽葉の林、この頽廃のひとときの畫廊、ま晝に燈れる木の葉のともし火、/その空に黄金なる幻つくりなし/明晰を証さんと、/『秋の嗟嘆』は蒼穹に昇る!」(十一月四日付松本隆晴宛)
「われは朽葉に憑かれたり/「朽葉」――この黄色はマラルメを想はせ、グリスブコフの『八つの道の一隅』の林で瞑想するキエルケガアルを想はせる……/黄金色の朽葉――この言葉のうちに、ヴァルヴァンの秋、ロオマの頽廃期、そしてまだわがうちに結晶せざる『沈黙の酩酊』が隠されてゐる。しかし、これほどのものを如何に歌ひえよう。この原因小さく、内包無限なるわが朽葉を!」(十一月十一日付松本隆晴宛)
十二月、ルヴェルディ「美しき星」(散文詩)を「蝋人形」に発表。
一九四三年(昭和十八年)三十三歳
一月、「音楽に寄す」(詩)を「蝋人形」に、「日本の季節と美」を「生活美術」に発表。この稿にマラルメの詩「嗟嘆」(Soupir)への言及がある。同月、『海軍献納愛国詩謡集』(興亜日本社)に「聴け、神々の聲を」(詩)を発表。二月、「詩と音楽について」(四二年十一月「音楽之友」に発表のものの転載)を「蝋人形」に発表。三月、ルネヴィル「詩人と神秘家」を「蝋人形」に発表(五月まで)。同月、『国民詩 第二集』(第一書房)に「音楽に寄す」を収録。四月、「夜の歌」(詩)を「蝋人形」に発表。五月、『国民詩選』(興亜書房 岡本潤編集代表)に「夜の歌」を収録。六月、ルネヴィル「詩と神話」を「蝋人形」に、(九・十月合併号まで計四回)、「神秘的体験と美的体験――「金棺出現図」にふれて――」を「生活美術」に発表。十月、ルネヴィル『詩的体験』を文明社より刊行。十一月、「藤村詩集にふれて」を「蝋人形」に発表。この号に片山敏彦の初寄稿(「エルネスト・エローのことなど」)がある。
(『狼煙』84号 重田暁輝編集 2017年12月)
一九四二年(昭和十七年)三十二歳
二月、「偉大なる追憶のために」(詩)を「蝋人形」に発表。三月、「愛国詩について」を「少女画報」に発表。
「暗き夜のうちにひとり坐する詩人よ/われまた夜の詩人 わが夜の歌 第四の歌を書きて/われも夜に訣別を告げむとおもふ/友よ われら大なる朝を 充実の真晝を迎へむかな 真晝と夜とを綜合せむかな/新緑のうちに生の賛歌を見むかな」(四月二十三日付松本隆晴宛)
五月、「わが夜の歌――第四の歌」(詩)、「自然と詩人」(エッセイ)を「蝋人形」に発表。ヴァレリー「コロオをめぐつて(Ⅱ)」を「生活美術」に発表。六月、「詩についてのノート(1)」を「蝋人形」に発表(八月、十月連載)。六月、『国民詩 第一集』(第一書房 中山省三郎編)に「わが夜の歌」を収録。七月、「微風に寄す」(詩)を「蝋人形」に、ヴァレリー「音楽・建築・劇 ――「アムツィオ」の来歴」を「音楽之友」に発表。また同号の座談会「詩と音楽の交流」に参加。他の出席者は勝承夫、藤浦洸、菊岡久利、深井史郎、吉本明光、堀内敬三、黒崎義英。
「松本隆晴よ/君が朝にはいかなる風の吹く?/君が夕べにはいかなる星のささやくか?/友よ、すこやかなれよ/「肉体は悲し!」われは絶えず痛みて生きるは苦し」(七月十一日付松本隆晴宛書簡)
八月、「真珠」(詩)、「吉田一穂著『黒潮回帰』について」(書評)を「蝋人形」に発表。九月、「天空について」(散文詩)を「知性」に発表。
「松本隆晴よ/近代とは倦怠の時代にあらずや/ヴェルギリウス、オヴィディウスら古代の詩人らは倦怠を知らず/神々を讃へて偉大なるかな/泥にはらばえる近代の人間獣は はや空翔ぶ翼を失へり/神々は讃むべきかな」(九月一日付松本隆晴宛)
「松本隆晴よ/とく病ひより癒え、秋風に髪なびかせよ。/われもまた《ポセイドンよ、わが友に恙がなき航路を与へよ》と祈らむものを。――/ラケダイモンの野に立つシモニデスのごと立ち上がれよ。/汝はまたオルプェウスあり。/ヘブラスの河より蘇へれよ。レスボスの浜辺に――」(九月二八日付松本隆晴宛)
十一月、「ルヴェルディの言葉」(翻訳)を「蝋人形」に、「詩と音楽について」(評論)を「音楽之友」に発表。
「朽葉こがねいろに窓を染め、/太陽は影の秘密を射しつらぬくに、/『秋の嗟嘆』は蒼穹に昇る!/黄金色なる朽葉の林、この頽廃のひとときの畫廊、ま晝に燈れる木の葉のともし火、/その空に黄金なる幻つくりなし/明晰を証さんと、/『秋の嗟嘆』は蒼穹に昇る!」(十一月四日付松本隆晴宛)
「われは朽葉に憑かれたり/「朽葉」――この黄色はマラルメを想はせ、グリスブコフの『八つの道の一隅』の林で瞑想するキエルケガアルを想はせる……/黄金色の朽葉――この言葉のうちに、ヴァルヴァンの秋、ロオマの頽廃期、そしてまだわがうちに結晶せざる『沈黙の酩酊』が隠されてゐる。しかし、これほどのものを如何に歌ひえよう。この原因小さく、内包無限なるわが朽葉を!」(十一月十一日付松本隆晴宛)
十二月、ルヴェルディ「美しき星」(散文詩)を「蝋人形」に発表。
一九四三年(昭和十八年)三十三歳
一月、「音楽に寄す」(詩)を「蝋人形」に、「日本の季節と美」を「生活美術」に発表。この稿にマラルメの詩「嗟嘆」(Soupir)への言及がある。同月、『海軍献納愛国詩謡集』(興亜日本社)に「聴け、神々の聲を」(詩)を発表。二月、「詩と音楽について」(四二年十一月「音楽之友」に発表のものの転載)を「蝋人形」に発表。三月、ルネヴィル「詩人と神秘家」を「蝋人形」に発表(五月まで)。同月、『国民詩 第二集』(第一書房)に「音楽に寄す」を収録。四月、「夜の歌」(詩)を「蝋人形」に発表。五月、『国民詩選』(興亜書房 岡本潤編集代表)に「夜の歌」を収録。六月、ルネヴィル「詩と神話」を「蝋人形」に、(九・十月合併号まで計四回)、「神秘的体験と美的体験――「金棺出現図」にふれて――」を「生活美術」に発表。十月、ルネヴィル『詩的体験』を文明社より刊行。十一月、「藤村詩集にふれて」を「蝋人形」に発表。この号に片山敏彦の初寄稿(「エルネスト・エローのことなど」)がある。
(『狼煙』84号 重田暁輝編集 2017年12月)
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