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パブロ・ネルーダ 『レカバーレン』

ここでは、「パブロ・ネルーダ 『レカバーレン』」 に関する記事を紹介しています。
 また、『レカバーレン』という詩では、チリ共産党の創立者ルイス・エミリオ・レカバーレン(一八七六─一九二四)の共産主義的人間像と、チリ共産党が誕生するにいたる歴史的必然性とが、リアルに感動ぶかく描かれている。

  レカバーレン

その名はレカバーレンと呼ばれた

ひとがよくて がっしりとして 恰幅(かつぷく)がよく
澄んだまなざしと ひきしまった額をもち
大きなからだは
ひろい砂漠のように
力にみちた鉱脈をおおっていた

・・・

この人民の指導者は
パンフレットをたずさえて やってきた
ひとりぼっちの男や うちひしがれた者
穴だらけの毛布で
うえた子供をくるんでいた者
非道な仕打ちでうちのめされた者を
そっと わきへ呼んで
かれは 言った
「おまえの声を ほかのひとの声とあわせろ
おまえの手を ほかのひとの手と組みあわせろ」

・・・

しいたげられた すべての人びとがやってきた
悲しい しゃがれ声をだす 幽霊のように
泣きごとをならべる すべての人びとがやってきた
そしてかれらは かれの教えをきいて
いままでの自分からぬけ出て
あたらしい 誇りにみちた人間にかわった

そのことが 草原じゅうに 知れわたった
かれは 国じゅうを歩きまわって
民衆と胸をひらいて話しあい
絶望にしずんでいるひとびとを立ち上らせた
かれの新聞は 印刷されるやいなや
炭坑の奥にもちこまれ
高い銅山のうえに運びあげられ
ひとびとは一字一字 食いいるように読んだ
それは ふみつけられたひとびとの声を
はじめて支持し 主張した新聞であった

かれは ばらばらに孤立していた人びとを組織した
かれは 拷問部屋のなかにまで
本や歌をもちこんで
不平不満を ひとつまたひとつと よせ集めた
こうして だまりこんでいた奴隷たち
苦しみにうちひしがれていたひとびとが
自分に名まえをつけ 自分を人民とよび
プロレタリアートとよび 労働組合とよび
堂堂とした一人まえの人間となった

この 生まれかわった住民
この 闘いのなかで きたえられたもの
この 勇敢な組織
この 不撓不屈の努力
この 錆びることのない鋼鉄
この 苦しみの結合
この 人問の砦(とりで)
この 明日をめざして伸びる道
この はてしない山脈
この 萌える新緑の春
この 貧しいひとびとのたたかいの武器
みんなの 苦しみから生まれでたもの
祖国の奥そこから うまれでたもの
辛抱づよいものから ふみつけられたものから
高貴なものから 永遠のものから 生まれでたもの
それには「党」の名まえがつけられた

共産党

これが その名まえであった
たたかいは はてしなかった
黄金をもった支配者どもは
禿鷹のように 党におそいかかった
かれらは 中傷をふりまいて挑みかかった
「共産党は ペルーや ボリヴィアなど
外国から 金をもらっているぞ」
かれらは 活動家たちが汗をたらして
買いとった印刷所を襲撃し
ぶちこわし 火を放って焼きはらい
人民の印刷機を めちゃくちゃにした
かれらは レカバーレンを迫害し
旅券をとりあげ 通行を禁止した
しかしかれは 人気ない地下に
たたかいの種子(たね)をかくした
党のとりでは かたく守りぬかれた

・・・
レカバーレンの手によって組織された
かがやく 党の赤旗は
炭坑から村へとすすみ
村から町へと ひろがり
鉄道線路とともに伸び
農村地帯に しっかりとした拠点をつくり
街や 広場や 農場にひるがえり
ほこりだらけの工場や
春たけなわの野にひるがえった
こうして団結の時代がはじまり
みんなが 勝利のために 歌って たたかった

・・・

(大月書店「愛と革命の詩人ネルーダ」『大いなる歌』)

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コメント
この記事へのコメント
映画〈ネルーダ~大いなる愛の逃亡者〉の中で朗読される詩「大いなる歌」。見終えて本解説が参考に為りました…。
2018/03/04(日) 23:30 | URL | pinewood #mdX0xzVk[ 編集]
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