わが心痛事・平和

　わが心痛事・平和
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ジャック・ゴーシュロン
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大島博光訳

わが地球は　痙攣を起こしている
その火は　くすぶっている
そうでないなら　これらの蝋燭消し　蓋《ふた》　経帷子《きょうかたびら》は　なんのためなのか
これらの猿ぐつわ　鎖　虐殺は　なんのためなのか

がちゃつく武器の音は　おやみなくつづき
むかしながらの謀略　陰惨な十字軍への呼びかけ
戦争　とことんまでの死
ただ死だけの死　と　その無言

犠牲《いけにえ》となった人たちへの崇拝と儀式
犠牲《いけにえ》となった人たちの名誉を　人びとはほめ賛える

それから　音もない締めつけ　抑圧
失業生活　月賦払《クレジット》いの暮らし
取引所による戦争　そして銀行による戦争
貧乏人の背中の毛は　むしりとられる


廃墟　退廃　砂漠
三つの窮地　苦境
生きるにぎりぎりの　耐えがたい最低限の生活費
死ねば　葬式費……　世界で
武器を轟かせるのに　いくらかかるのだろう
考えてもみたまえ　週毎に　時間毎に　秒毎に
虚無の支配のために費やされる金額を

わがただ一つの気がかり　わが心痛む平和よ
「平和」という言葉の意味するものを探し求める
手だてさえ　われらはまだ持たないとは
歴史は　われらの歴史の歩みは
あまりにも遅すぎる

悪戦苦闘して　われわれは知る
前進後退をくりかえしながら　たえず前へと
群衆と民衆が前進してゆくことを
おのれの力と現実に眼をひらきながら

そして万難を排して平和に与えることを
充分な大きさを　生の尊厳を
そして人間としての誇りを　くすぶる火を

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