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死を生きる

ここでは、「死を生きる」 に関する記事を紹介しています。

 死を生きる            大 島 博 光

立とうにも脚《あし》がしびれて崩折れる
壁にしがみついてにじり歩く
  それでも生きなければならない
  まるでもう死を生きてるようだ

肛門が痛んで座っていられない
横になれば腰痛が疼いて呻めきをあげる
  そんな生地獄でも生きねばならぬ
  まるでもう死を生きてるようだ

そんな老いの苦しみや痛みを書くでない
書いたとて何んの役になろう
  そんなことを書くしかない
  死にゆく時間のなかで 断末魔のなかで

そんなしかめっ面《つら》や老醜をさらすな
みんなじっと耐《こら》えて 黙っているのだ
  死の床に就いてまで まだ
  美と醜を争うというのか

死にゆく者の呻めき喚めきを
だれがさえぎり抑えつけよう
  死にゆく者をして思いのままに
  呻めくにまかせ 喚めくにまかせよ

みんな声を殺して 耐《こら》えているのだ
これもまた死との闘《たたか》いなのか

かつてきみも愛をほめたたえ
未来をのぞき見て歌っていたではならないか
  すべては思い出となり過去となる
  すべては思い出ととなり影となる

かつてきみも生をたたえて希望をうたい
未来の歌をうたっていたではないか
  そうだ 死にゆくときにも思い出そう
  愛のすばらしさを未来の歌を

それこそが人間をよみがえらせる
死からよみがえらせ 立ち上がらせる

死んでしまえば苦しみも痛みもない
死にゆく己の時間は拷問責苦の時だ
  まるでもう死を生きてるようだ
  それでも生きなければならぬ

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