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こんにち、われわれ日本の人民は人民民主革命のさなかにある。この人民革命は、封建制の残りかすをぬぐいとり、民主主義を徹底することによって、つぎの社会主義革命の準備と条件をととのえるにある。この革命の先頭に立っているものは、いうまでもなく労働者階級であるが、革命はさらにすべての働く人民、農民、中小商工業者、民族資本さえもの参加と同盟を求めている。
このような人民革命は、プロレタリア文学よりもさらにはば広い人民文学を求めている。そうして、プロレタリア文学の方法がプロレタリア・レアリズムであり、そうならざるを得なかったように、こんにち人民文学の文学的方法としてのレアリズムを人民レアリズムと呼ぶことが妥当であろう。
したがって、人民レアリズムはプロレタリア・レアリズムの遺産と教訓をさらに発展拡大するとともに、いっそうはば広い人民の現実に根深くはいりこまねばならない。この場合、人民の現実に深くはいりこみ、人民とその現実を描くということは、あくまで人民革命の立場に立ってのことであることは言うまでもない。人民のための、人民による人民文学は、その最高目標たる人民革命をめざし、人民革命の武器となることによって、はじめて人民のための文学となることができるからである。そして、人民レアリズムとは、人民革命の武器となりうるような文学の文学的方法でなければならない。つまり、人民の苦しみ、喜びや悲しみ、そのたたかいや希望──人民の現実をレアリスティックに描き出すだけでなく、この苦しみとおくれにみちた現実を克服し、そこから立ち上がり、社会を変革するために、いかに生き、いかにたたかうべきかを人民に教え、指し示し、古い封建的意識や思想の残りかすをはらい捨てさせ、あるいは資本主義社会によって毒されたいろいろの意識や思想をはらい捨てさせることによって、人間変革を行わせるような、人民の「魂の技師」としての役割りをはたさねばならない。(つづく)
(東京大学学生新聞1949年9月15日)
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