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ユナイテッド・フルーツCo.

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ユナイテッド・フルーツCo.
                      パブロ・ネルーダ
                      大島博光訳

トロンペットが 鳴りひびいたとき
地上では すべての準備がととのっていた
そこでエホバは この世界を分けてやった
コカコーラや アナコンダや
フォード・モータースや その他の会社に
ユナイテッド・フルーツCo.は
いちばん肥(こ)えた土地を 手に入れた
わが国の 中部沿岸地方を
アメリカの 甘美な腰の部分を

かれらは 自分たちの土地を
新たに 「バナナ共和国」と名づけた
そして 眠ってる死者たちのうえで──
また あの偉大や自由や旗をたたかいとりながら
安らかに眠れぬ英雄たちのうえで
     
かれらは じゃかすか 喜歌劇を おっ始(ぱじ)めた
かれらは 企業精神を奮い立たせ
シーザーのように 月桂冠を与え
貪欲な利潤追求を けしかけて
蠅どもの独裁をうちたてたのだ
トルヒーヨという蠅ども タコスという蠅ども
カリアスという蠅ども マルティネスという蠅ども
ウビコという名の蠅ども 貧しいものの血と
ママレードにまみれた蠅ども
人民の墓のうえで ぶんぶん唸(うな)りをあげる
酔いどれた蠅ども
サーカスのように 宙返りをする蠅ども
搾取圧制に秀(ひい)でた
手練手管(てれんてくだ)をこころえた蠅ども

これら 血まみれの蠅どものなかに
フルーツCo.は 錨をおろし
コーヒーと果物を積み込んで
その貨物船は 滑ってゆく
侵蝕された われらの国の宝ものを
満載した 盆のように

そのあいだにも おれたちの港港の
あま酸っぱい地獄で
靄(もや)につつまれた朝がた
インディオたちが 倒れてゆく
人間の肉体がひとつ ごろりと転(ころ)がる
それはもう 名まえもないがらくただ
地に落ちた ひとつの番号だ
挨捨(ごみすて)場に投げ捨てられた   
腐った果物の ひと房(ふさ)なのだ

(『大いなる歌』第五章「裏切られた砂」)

   *    *    *    *    *    *
『大いなる歌』の第五章「裏切られた砂」は、一九三〇年~四〇年代の南アメリカ諸国における独裁者たちの圧制、それらの独裁者を操っていたアメリカの帝国主義的多国籍企業の陰謀、搾取、支配の姿をあばいている。
(新日本新書「パブロ・ネルーダ」)
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