きみはうつろな独房の
大島博光
きみはうつろな独房のなかで
ひとり老いねばならぬ死刑囚
冷たい壁をつたって歩いて
堂堂めぐりをくり返すばかり
きみの犯した罪とあやまちは
恋びとを失った悲しさ寂しさを
ところかまわず泣きわめき
としがいもなく泣き狂ったこと
あのあけぼのをも明日の日をも
泣きほほけて忘れさるほどに
そうして他者をもおのれ自身をも
おろかにも見うしなうほどに
きみの処刑には電気椅子も
絞首台も斧も要りはしない
なぜならば処断されるのは
きみのなかの人間そのものだから
きみの処刑は引きのばされて
きみは死にそこね死にそびれ
死におくれて老醜をさらし
そのはては狂い死にするのだ
だが死神(しにがみ)にとりつかれて
どんなに死夢(しにゆめ)を描いてみようと
そんな死体(しにたい)のきみには
死花ひとつも咲くものか
死刑囚のきみは亡霊のように
よろけながら待っているのだ
悪夢も夢も消えてしまう
夢のようなある晴れた日を
一九九二年十月
大島博光
きみはうつろな独房のなかで
ひとり老いねばならぬ死刑囚
冷たい壁をつたって歩いて
堂堂めぐりをくり返すばかり
きみの犯した罪とあやまちは
恋びとを失った悲しさ寂しさを
ところかまわず泣きわめき
としがいもなく泣き狂ったこと
あのあけぼのをも明日の日をも
泣きほほけて忘れさるほどに
そうして他者をもおのれ自身をも
おろかにも見うしなうほどに
きみの処刑には電気椅子も
絞首台も斧も要りはしない
なぜならば処断されるのは
きみのなかの人間そのものだから
きみの処刑は引きのばされて
きみは死にそこね死にそびれ
死におくれて老醜をさらし
そのはては狂い死にするのだ
だが死神(しにがみ)にとりつかれて
どんなに死夢(しにゆめ)を描いてみようと
そんな死体(しにたい)のきみには
死花ひとつも咲くものか
死刑囚のきみは亡霊のように
よろけながら待っているのだ
悪夢も夢も消えてしまう
夢のようなある晴れた日を
一九九二年十月
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