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マティスの言葉 デッサンについて(5)正確さは真実ではない(上)

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マティスの言葉 デッサンについて

 正確さは真実ではない

(一九四七年リェージュでひらかれたアンリ・マテイス・デッサン展のカタログの序文。陳列された四枚の肖像画の複製がこのカタログに掲載されていた。)

 この展覧会のためにわたしがきわめて入念に選んだ四十八枚のデッサンのなかに、鏡のなかの自分の顔を見て描いた──恐らく肖像画と言っていい──四枚のデッサンがある。この展覧会を訪れる観衆はとりわけこの四枚のデッサンに注目されたい。
 わたしの考えでは、これらのデッサンは、わたしが長い間デッサンの特徴について加えてきた考察の結果を要約している。デッサンの特徴は、自然を正確にコッピーしたかたちには依存せず、あるいは根気よく集められた、正確な細部の集合に依存するのではなく、対象を前にした芸術家の深い感情に依存するのである。芸術家が選んだ対象の上に、彼の注意は向けられ、芸術家はそこに精神を集中しなければならない。

 これらのことについてのわたしの確信が生まれたのは、例えば木の葉では──とりわけイチジクの葉では──葉と葉のあいだにはかたちに大きな違いがあるが、それもそれらの葉が共通の特徴に結びつくのを妨げない、ということを確かめた時である。イチジクの葉たちは、それぞれ気まぐれなかたちをしているが、やはりイチジクの葉なのである。そのほか大地の生みだすもの、果実、野菜などについても、わたしは同じような考察を試みた・・・したがって表現すべき対象の眼に見える外観から引き出さなければならない本質的な真実が存在する。重要なのはただひとつ、この真実である。
(つづく)

(『美術運動』1988年2月)

マチス女
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