また一九四三年三月、「レットル・フランセーズ」紙の責任者クロード・モルガンがアラゴンと連絡をとるためにパリからリヨンにやってくる。帰りに彼は、アラゴンの詩「義勇兵の歌」「責苦のなかで歌った者のバラード」をたずさえてゆく。これらの有名な抵抗詩はアラゴンが地下生活に入った時期に書かれたものである。
責苦のなかで歌った者のバラード(抄)
もし もう一度 行けとなら
わたしはまた この道を行こう
ひとつの声 牢獄より起こり
明日の日を 告げる
だが もう一度行けとなら
わたしはまた この道を行こう
牢獄より湧きあがる声は
明日の日のために 語りかける
おお 友よ わたしが死んだら
わたしの愛と わたしの拒否とが
なんのためだったか わかるだろう
わたしは死ぬが フランスは残る
弾丸(たま)のしたでも 彼は歌った
「血に染む旗は 挙げられぬ」と
二度目の斉射までに その歌を
歌いおわらねばならなかった
マルセイエーズを歌いおわった時
もうひとつの フランスの歌が
かれの唇をついて 湧きあがった
全人類のための インターナショナルが
(『フランスの起床ラッパ』)
(訳注)「血に染む旗は 挙げられぬ」はラ・マルセイエーズの歌詞の一行。
この詩はガブリエル・ペリの一周忌を記念して書かれた。ペリは一九四一年十二月十五日モン・ヴァレリアンで人質として銃殺された。ペリはフランス共産党の指導者の一人で、国会議員であり、ドイツ・ファシズムにたいする仮借なき批判者であった。一九四一年夏、かれはヴィシィの売国政府によって逮捕されたのちドイツ軍に引き渡された。ドイツ軍はかれを裏切らせるために、あらゆる甘言と拷問を用いたが、かれは毅然として拒否した。処刑の前夜にペリが書いた最後の手紙は共産党員の忠実さ、未来への信頼、ゆるぎない確信にみちた遺言として有名である。
「わたしは最後にもう一度じぶんの良心をふりかえってみた。少しもやましいことはない。もしも、 もう一度人生をやりなおさねばならぬなら、わたしは同じ道を行くだろう。わたしは今夜もやはり信じている。『共産主義は世界の青春であり』そして『それは歌うたう明日の日を準備する』と言った親愛なるポール・ヴァイヤン・ クーチュリエの言葉の正しかったことを。わたしはまもなく『歌うたう明日の日』を準備するだろう。わたしは死に直面する力をもちあわせているように思う。さようなら、フランス万歳!」
(つづく)
(新日本新書『アラゴン』)
*「責苦のなかで歌った者のバラード」
*「ガブリエル・ペリ最後の手紙」
責苦のなかで歌った者のバラード(抄)
もし もう一度 行けとなら
わたしはまた この道を行こう
ひとつの声 牢獄より起こり
明日の日を 告げる
だが もう一度行けとなら
わたしはまた この道を行こう
牢獄より湧きあがる声は
明日の日のために 語りかける
おお 友よ わたしが死んだら
わたしの愛と わたしの拒否とが
なんのためだったか わかるだろう
わたしは死ぬが フランスは残る
弾丸(たま)のしたでも 彼は歌った
「血に染む旗は 挙げられぬ」と
二度目の斉射までに その歌を
歌いおわらねばならなかった
マルセイエーズを歌いおわった時
もうひとつの フランスの歌が
かれの唇をついて 湧きあがった
全人類のための インターナショナルが
(『フランスの起床ラッパ』)
(訳注)「血に染む旗は 挙げられぬ」はラ・マルセイエーズの歌詞の一行。
この詩はガブリエル・ペリの一周忌を記念して書かれた。ペリは一九四一年十二月十五日モン・ヴァレリアンで人質として銃殺された。ペリはフランス共産党の指導者の一人で、国会議員であり、ドイツ・ファシズムにたいする仮借なき批判者であった。一九四一年夏、かれはヴィシィの売国政府によって逮捕されたのちドイツ軍に引き渡された。ドイツ軍はかれを裏切らせるために、あらゆる甘言と拷問を用いたが、かれは毅然として拒否した。処刑の前夜にペリが書いた最後の手紙は共産党員の忠実さ、未来への信頼、ゆるぎない確信にみちた遺言として有名である。
「わたしは最後にもう一度じぶんの良心をふりかえってみた。少しもやましいことはない。もしも、 もう一度人生をやりなおさねばならぬなら、わたしは同じ道を行くだろう。わたしは今夜もやはり信じている。『共産主義は世界の青春であり』そして『それは歌うたう明日の日を準備する』と言った親愛なるポール・ヴァイヤン・ クーチュリエの言葉の正しかったことを。わたしはまもなく『歌うたう明日の日』を準備するだろう。わたしは死に直面する力をもちあわせているように思う。さようなら、フランス万歳!」
(つづく)
(新日本新書『アラゴン』)
*「責苦のなかで歌った者のバラード」
*「ガブリエル・ペリ最後の手紙」
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