解放と幻滅
返してくれ わがパリを ルーヴルを トゥルネルを
ついに解放の希いはかなえられてパリは解放される。一九四四年八月二十四日、暑い夜の十一時ごろ、突然、狂ったようにノートル・ダムの大鐘が鳴り出した。それにこたえるように、対岸のサン・ジェルヴェ寺院の鐘が鳴りだし、つづいてパリじゅうの鐘という鐘が鳴りだした。またたく星空の下、燈火のない暗いパリは夢のような歓喜の大合奏につつまれた。市民は外に飛びだし、街や大通りを埋めた。──自由になったぞ!
アラゴンは解放の歓びをつぎのように歌う。
パリ
嵐のさなかでさえ さわやかなところ 夜のさなかでさえ 明るいところ
大気はひとを酔わせ 不幸も勇気となる
うち砕かれた舗石にも 希望は輝き
崩れ落ちた壁のなかから 歌声はあがる
硝煙のなかのパリほどに 輝かしいものはない
蜂起したパリの額ほどに 清らかなものはない
危険をものともせぬ わがパリほどに
何ものも 砲火も 火矢(ほや)も 強くはない
わが抱くこのパリほどに 美しいものはない
勝利したわが人民の あの歓呼の声ほどに
わたしの心をうったものは かつてなかった
かくもわたしを歓ばせ 泣かせたものはなかった
経帷子(きょうかたびら)を引き裂くほどに 偉大なことはない
パリ パリ みずからを解き放ったパリよ
(『フランスの起床ラッパ』)
(つづく)
(新日本新書『アラゴン』)
返してくれ わがパリを ルーヴルを トゥルネルを
ついに解放の希いはかなえられてパリは解放される。一九四四年八月二十四日、暑い夜の十一時ごろ、突然、狂ったようにノートル・ダムの大鐘が鳴り出した。それにこたえるように、対岸のサン・ジェルヴェ寺院の鐘が鳴りだし、つづいてパリじゅうの鐘という鐘が鳴りだした。またたく星空の下、燈火のない暗いパリは夢のような歓喜の大合奏につつまれた。市民は外に飛びだし、街や大通りを埋めた。──自由になったぞ!
アラゴンは解放の歓びをつぎのように歌う。
パリ
嵐のさなかでさえ さわやかなところ 夜のさなかでさえ 明るいところ
大気はひとを酔わせ 不幸も勇気となる
うち砕かれた舗石にも 希望は輝き
崩れ落ちた壁のなかから 歌声はあがる
硝煙のなかのパリほどに 輝かしいものはない
蜂起したパリの額ほどに 清らかなものはない
危険をものともせぬ わがパリほどに
何ものも 砲火も 火矢(ほや)も 強くはない
わが抱くこのパリほどに 美しいものはない
勝利したわが人民の あの歓呼の声ほどに
わたしの心をうったものは かつてなかった
かくもわたしを歓ばせ 泣かせたものはなかった
経帷子(きょうかたびら)を引き裂くほどに 偉大なことはない
パリ パリ みずからを解き放ったパリよ
(『フランスの起床ラッパ』)
(つづく)
(新日本新書『アラゴン』)
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