ある日、モニック嬢は、自分が修道女になることを偉大な友人のマチスに最初に知らせにきた。それは彼には大きな悲しみで、彼女を哀れに思った。なぜなら、彼にはわかっていたからである。つまり彼女は快方に向ったとはいえ、結核の自分の健康状態からして、家庭を築くのには向いていないと判断して、信仰生活に入るということで、みずから背水の陣を敷いたのだ、と。
こうして彼女は修道女ジャック・マリとなった。
修道女ジャックは修道院の修行を終えると、もう一度ヴァンスのおなじ保養所へやってきて、40名の入所者の面倒を見る修道女の任務をひきうけた。
彼女はすっかり成熟して、自分の精神的な苦悩を克服したように見えた。そして、くたくたになるような仕事にもかかわらず、彼女は疲れを知らぬように働いた。
彼女のマチスへの訪問は、彼女の仕事のためにだんだん数少なくなり短かくなったが、また始まった。二人のあいだは愛情においてもイタズラ好きにおいても何も変らなかった。彼の健康や仕事やその他の気がかりなどが彼を苦しめないときは、マチスは大変からかい好きで、笑うのが好きだった。
1948年の初め、マチスを訪れた彼女は、小さな教団が礼拝堂を大きくするためにそれをとり壊し、間に合わせの場所に応急の小さな礼拝堂を建てるという意図のあることを彼に話した。修道女たちにとってのこの「大事業」はたちまち彼女たちの大きな話題となったのである。
(つづく)
(自筆原稿)
こうして彼女は修道女ジャック・マリとなった。
修道女ジャックは修道院の修行を終えると、もう一度ヴァンスのおなじ保養所へやってきて、40名の入所者の面倒を見る修道女の任務をひきうけた。
彼女はすっかり成熟して、自分の精神的な苦悩を克服したように見えた。そして、くたくたになるような仕事にもかかわらず、彼女は疲れを知らぬように働いた。
彼女のマチスへの訪問は、彼女の仕事のためにだんだん数少なくなり短かくなったが、また始まった。二人のあいだは愛情においてもイタズラ好きにおいても何も変らなかった。彼の健康や仕事やその他の気がかりなどが彼を苦しめないときは、マチスは大変からかい好きで、笑うのが好きだった。
1948年の初め、マチスを訪れた彼女は、小さな教団が礼拝堂を大きくするためにそれをとり壊し、間に合わせの場所に応急の小さな礼拝堂を建てるという意図のあることを彼に話した。修道女たちにとってのこの「大事業」はたちまち彼女たちの大きな話題となったのである。
(つづく)
(自筆原稿)
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