しかし、アランブラの最大の悲劇は、一四九二年、カトリック王フェルナンドとイザベルによって、アラブ最後の拠点だったこのグラナダが落とされたことである。
アラゴンは、「グラナダの陥ちた前夜」という、ある歌の文句にとり憑かれて、──そこにまた第二次大戦ちゅうのパリの陥落を思いあわせて、やがて、「エルザの狂人」という尨大な散文と詩による大冊を書くことになる。そこでは、アラブの王の悲劇、アラブ文学・哲学、などが縦横に歌われ、二○世紀の問題として、考察されることになる。「巻頭の歌」はアラブ最後の少年王の嘆きを歌っている。
風も凍てつくアランブラに
わたしは 痴呆のように生きた
うつろな眼 灰色のくちびる
つぶやく噴水 いつか傷つき
いま割れて 砕ける 鏡よ
グラナダの陥ちた 前夜
わたしは 使いはたされた夜だ
朝がた おのれの思想を探すのだ
またわたしは もう賭け金もなく
自分のシヤツを引き裂く賭博者だ
すでに刺された心臓をひとが狙う
グラナダの陥ちた 前夜
注 アランブラ宮殿で、英語による解説者はアルハンブラと発音していたが、グラナダのタクシーの運転手はアランブラと発音し、アルハンブラではないと言った。
(つづく)
(『詩人会議』 1979年4月)
アラゴンは、「グラナダの陥ちた前夜」という、ある歌の文句にとり憑かれて、──そこにまた第二次大戦ちゅうのパリの陥落を思いあわせて、やがて、「エルザの狂人」という尨大な散文と詩による大冊を書くことになる。そこでは、アラブの王の悲劇、アラブ文学・哲学、などが縦横に歌われ、二○世紀の問題として、考察されることになる。「巻頭の歌」はアラブ最後の少年王の嘆きを歌っている。
風も凍てつくアランブラに
わたしは 痴呆のように生きた
うつろな眼 灰色のくちびる
つぶやく噴水 いつか傷つき
いま割れて 砕ける 鏡よ
グラナダの陥ちた 前夜
わたしは 使いはたされた夜だ
朝がた おのれの思想を探すのだ
またわたしは もう賭け金もなく
自分のシヤツを引き裂く賭博者だ
すでに刺された心臓をひとが狙う
グラナダの陥ちた 前夜
注 アランブラ宮殿で、英語による解説者はアルハンブラと発音していたが、グラナダのタクシーの運転手はアランブラと発音し、アルハンブラではないと言った。
(つづく)
(『詩人会議』 1979年4月)
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