『世界の終り』『炎の剣』(3)

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 しかし叙事詩は悲劇的な終曲へとむかう。「エデンの園」の恋人たちには、呪いの炎の剣が加えられる。ここでは、炎の剣は南アメリカにおける火山の爆発というかたちをとって現われる。この火の洪水のなかから、ロードとロジーは、森の動物たちといっしょに、救いの船に乗って逃げる。海の方へ──詩人の好きな海の方へ。
 すべての神話が望むように、ロードとロジーも滅びないだろう。彼らは禁断の木の実を味わいながら、しかし呪われることなく、遂にその古い呪いの神を殺してしまう。こうして詩人の意志にしたがって、古い神は死に、恋人たちは古い伝統的な運命から解放され、彼らじしんが神となったことを意識する。

  男の名は ロード
  女の名は ロジー

  彼らは 帆船を操った
  彼らは 船の世界をとり仕切った
  そのとき突然 滝のような波のふちで
  死のふちで 瞼は燃え 肉は躍り
  眼ははげしい痛みにみちて
  彼らは 自分たちが神になったことを覚った
  古い神が 呪いの火柱を立て
  炎の剣をふりあげたとき 古い神は死んだのだ
  おのれの創造を完うし それを呪った古い神は
  新しい作物もなく 死んだ
  そしていまや 人間が神になった
  人間は 大地に満たなければならない
  人間は 海に満たなければならない
  なぜなら ひとり新しい神神だけが
  愛の林橋を噛んだのだから

 さて、ロードとロジーはネルーダとマチルデということになろう。『船長の詩』において匿名でうたわれた愛、つづいて『イスラ・ネグラの思い出』『一OOの愛のソネット』において飽くことなく追求された愛は、『炎の剣』において、調子高い叙事詩的な幻想と希望をうたいあげているといえよう。

(この項おわり)

(新日本新書『パブロ・ネルーダ』)

夕やけ

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