ここでは、「道」 に関する記事を紹介しています。


道1

道2

赤い実


 道
                 大島博光

わたしの歩いた道ばたには
アザミやスミレが咲いていた
ワタスゲの綿穂が風に揺れていた
ミモザや天人花(ミルト)も夢の色に咲いていた
きちがい花や毒草も生えていた
    *
空にかかった虹にみとれて
眼に見えない 天上のものに誘われて
空ばかり見あげて 道草をくった

あんまり地上が息苦しかったので
わたしは夢みたのだ
空とぶ鳥の道を
    *
春のタぐれ 行き暮れて
道ばたのジンチョウゲのかげに
しゃがみこんだ
愛にこんぐらがって
    *
蛇イチゴの生えた
わき道へ迷いこんで
気がついたら
崖っぷちに立っていた
    *
狂人(きちがい)を道連れにして酔っぱらって
千鳥足で深夜の街をさまよった
鳥のことばで 夢を追った
月の出た屋根の上で踊った
眼がさめたら
ぬかるみにねていた
    *
窓の灯が 雪の野をぼおっと
黄いろく 温かく染めていた

放蕩息子は
遠い雪道を帰ってきた
    *
いつも みんなから遠くはぐれて
ひとりぼっちで歩いていた
いつも あんまりひとの行かない
裏通りや石ころ道ばかりを歩いていた
どこへ行くというあてもなかった

気がつけば
人びともみんな離ればなれに
てんでんばらばらに歩いていた
それが 人間らしさであるように
それがまるで美徳であるように
ずっと 思い込んでいた
あるいは 思い込まされていた

みんなが腕を組んで進むのを
怖れおののく連中が むかしから
そういう思想を吹き込んでいた
    *
わたしたちを地獄の道へと駆りたて
追いたてたやつらは いつかまた
わたしたちの頭上にふんぞり返っていた
狼はまた野放しになった
    *
冬枯れた山の村の斜面の道を
旗を風にはためかせながら
歌いながら わたしは歩いて行った
みんなといっしょに
未来について語りあうために
みんなといっしょに歌うために
    *
あるひとたちは道からそれて
闇市に裏切りを売りに行った
がらくたを高値に売りつけに行った

売るものはわたしには何もなかった
売る山羊も 売る山もなかった
むろん 売るような魂もなかった
    *
いま わたしは
泉へゆく道を歩いている
みんなが愛しあって知りあって
手をつなぎあって行く道だ
みんなが平和を飲む
泉への道だ

(『詩人会議』1985年6月) 
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