『ホアキン・ムリエタの栄光と死』(上)

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『ホアキン・ムリエタの栄光と死』

 一九六七年、ネルーダの最初の詩劇『ホアキン・ムリエタの栄光と死』が出版され、一○月、チリ大学演劇研究会によって初演された。
 ホアキン・ムリエタは、「ゴールド・ラッシュ」の時代の伝説の人物である。彼は一団の部下を連れて、ヴァルパライソからカリフォルニアに渡って、黄金を手に入れるために懸命に働く。しかし彼らは成金の残酷な北アメリカ人たちから鞭(むち)と弾丸の報復をうけ、ムリエタは妻のテレサとともに首を切り落されてしまう。その頃北アメリカ人たちは人種的差別によって、チリ人やメキシコ人を排撃し虐殺したのである。伝説では、切り落されたムリエタの首は馬に乗ってチリに帰り、その怒りをぶちまけることになっている。この詩劇の「まえがき」に作者は書く。
 「ホアキン・ムリエタの亡霊はいまもカリフォルニアをうろついている。月の夜、憎しみに燃えた馬にまたがって、ソノラ砂漠をよこぎり、メキシコのマドレの山なみに消えてゆく彼の姿が見える……亡霊の足どりはしかしながらチリへと向かう……ホアキン・ムリエタはチリ人であった。……
 彼の切り落された首はこのカンタータを要求した。わたしはそれを反逆者のオラトリオとしてだけでなく、ひとつの出生証明書として書いた。
 ムリエタに関する書類のたぐいは、ヴァルパライソの地震や黄金獲得の闘いのなかで失われてしまった。こういうわけで、彼は彼の流儀でもう一度生まれなければならない。亡霊としてまた炎の男として、きびしい時代の開拓者として、希望のない復讐者として。
 この歌にとりかかるにあたって、わたしはただこの反逆者のいさおしを明らかにすることを心がけた。わたしはこの反逆者とその生活を共にした。それゆえわたしは、この男の生の輝きと死の広大さを証言するのだ」
 この詩劇の頂点をなすムリエタの声を──ムリエタに託したネルーダの声をきいてみよう。
(つづく)

(新日本新書『パブロ・ネルーダ』)

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