『一○○の愛のソネット』(3)ソネットの形式


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(3)ソネットの形式


「わたしの妻はわたしと同様に田舎者だ。彼女は南部の町チジャンで生まれた。そこは、田舎風の陶器による幸福と怖るべき地震による不幸とで有名な町だ。わたしは彼女を語ろうとして、『一○○の愛のソネット』のなかで彼女のすべてを歌った。それらの詩、それらのソネットは、恐らく彼女がわたしにとって何を意味するかを明らかにするだろう。大地と生とがわたしたち二人を結びつけたのである。」(『回想録』)
 『一○○の愛のソネット』において、ネルーダは、ソネットの形式を愛の詩にもっともふさわしいとする西欧の伝統に従っているのである。
 ソネットの巨匠はおそらくイタリアのべトラルカ (一三○四〜一三七四)であろう。フランスではロンサール(一五二四〜一五八五)のソネットが鳴りひびいていた。スべイン詩にあっては、フェルナンド・デ・エレーラ(一五三四〜一五九七)、ルイス・デ・ゴンゴーラ(一五六一〜一六二七)などがソネットを発展させていた。ネルーダはこの詩集の「まえがき」に書く。「いつの時代の詩人たちも、めいめいそれぞれに、気どった優雅な趣味によって、金銀細工の音や、水晶の音や、あるいは砲声のように鳴りひびく脚韻をもちいてきた。
 わたしはこれらのソネットを、きわめて謙虚に、つつましく木材でつくり、それらに木材というこの不透明で純粋な物質の音をあたえた。ねがわくば、これらのソネットがそのようにきみの耳にとどいてくれるように。きみとわたしとは方ぼうの森や砂漠を歩きまわり、荒涼とした湖水や灰色の高原を歩きまわって、水に流されるにまかせ、嵐に吹かれるにまかせた純粋な木材や板切れを拾い集めた。これらのいともなつかしい足跡から、わたしは斧や小刀やナイフで愛の骨組をつくり、一四枚の羽目板で小さな家を建てた。そのなかに、わたしの愛し歌うきみの眼が住めるように……」
 詩人はここで、優雅な金銀細工の音楽にたいして素朴な木材の音を対置させ、それを自分の手法として採用する。そして美しい比喩をとおして、彼は恋人とさまよった「森や砂漠」や「湖水や高原」などの大地のうえの生に詩の源泉をみいだすというレアリストの詩法を語っている。
(つづく)

ネルーダとマチルデ
ネルーダとマチルデ

(新日本新書『パブロ・ネルーダ』)

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