アジアは見た ──「五〇年後」

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アジアは見た



(『詩人会議』1996年1月 96新年作品特集、「大島博光詩集1995〜2003」)

木々



アジアは見た
  ──「五〇年後」

                 大島博光

だれにも聞こえる 怨嗟の声が
アジアの国の いたるところで
戦争の古傷が うずき痛んで
五〇年後にも 怒り叫ぶのが

アジアは見た おのれの大地に
軍刀をかざした 日本の鬼を
アジアは見た おのれの空に
はためきひるがえる 「日の丸」を

アジアは見た 怒り燃える眼に
おのれの掘った 墓穴に
首を切られて 投げこまれるのを
おのれ自身が 放り込まれるのを

アジアは見た 子を空に投げて
銃剣で刺し殺す 鬼どもを
手あたり次第 撃ち殺されて
街にも野にも 流された血を

アジアは見た 娘を犯され
納屋の穀物を奪いとられ
村じゅうに放たれた火を
わが家を焼く 炎と煙を

アジアは見た 野獣どもの艦に
投げこまれた 生娘たちを
踏みにじられた その身とこころに
いまも傷つき呻めく老女たちを

それらすべては 数えあげられた
歴史の壁に きざみ込まれた
だれも 塗り変えることはできない
だれも 消し去ることはできない

アジアは見た 生きた亡霊たちを
あれは侵略戦争ではなかったと
南京大虐殺は作り話だと
歴史をねじ曲げるファシストたちを

だれにも聞こえる 怨嗟の声が
アジアの国の いたるところで
戦争の古傷が うずき痛んで
五〇年後にも 怒り叫ぶのが

(『詩人会議』1996年1月 96新年作品特集)
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