『とりとめのない放浪』──(1)怠け者

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怠け者


『とりとめのない放浪』

 『とりとめのない放浪』は一九五八年に出版された。詩人は、自分の思い出、経験、旅行など──いわば大地から大地への放浪を打明ける。詩人は疲れることなく事物に語りかけ、動くものと動かないもの、生きて変るものと変らなものとを統一しようとする。こうして人間実存の本質に迫ろうとする点で、これは哲学的な詩集であると言えよう。ここには、人類が初めて月面に到達した、宇宙探査を反映した詩がみだされる。「怠け者」という詩がそれである。

  怠け者

 金属の物体は
 星のあいだを飛びつづけるだろう
 人間たちはふらふらになって登ってゆき
 優しい月に侵入し
 そこに薬局を建てるだろう

 いまは葡萄のとりいれのまっさかり
 わが国では 葡萄酒(さけ)が流れはじめる
 アンデスの山なみと海のあいだに
 わがチリでは 桜んぼが踊り
 素朴な小娘たちが歌をうたい
 ギターのうえに涙がひかる

 わたしの家には 海も陸(おか)もある
 妻は 森のはしばみの実の色をした
 でっかい眼をしている
 夜がやってくると 海は
 白と緑を 身にまとい
 月は 泡のうえで
 海の婚約者(いいなずけ)の夢をみる

 どうして星を変えることがあろう

 ここには、ネルーダらしい楽天主義に溢れたユーモアによる、宇宙探検への風刺を読みとることができる。
(つづく)

(新日本新書『パブロ・ネルーダ』)

夕暮れ



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