わが地獄の季節

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わが地獄の季節2


(詩集『老いたるオルフェの歌』)

彫像



 わが地獄の季節

わたしの地獄が 地獄の季節が
生き残ったものの苦しみが
こんな老いの日にやってくるとは
老いといっしょにやってくるとは
      *
きみはきみの死者ばかりをうたう
きみはきみの地獄ばかりをうたう
まるできみには この世のなかに
地獄と墓場しかないかのように

そこに きみの傷ぐちがある
そこに きみのあやまちがある
くらやみばかりに見入る男よ
大地を見失ったオルフェよ

きみの鏡は 雨に曇った
霰(あられ)にたたかれて ひび割れた
もう死んでゆく子も映らないのか
子の死を待つ禿鷲も見えぬのか

きみがおちたとわめく地獄は
きみの観念の地獄だ それは
きみの弱さの内面舞台だ
泣いてる男のひとり芝居だ

愛と死のドラマがそこにある
きみは悲劇俳優をまねる
そのフィナーレの老いのひと幕
妻の影を呼んできみはわめく
舞台の地獄の火は責めたてる
きみの強さ脆(も)ろさをあぶり出し
きみの生きた生きざま死にざまを
秤にかけて裁くかのように

変えるべき世界のあるかぎり
詩人は希望をかかげつづける
そんな科白を(せりふ)きみは吐いたばかり
その世界・希望はどこへつながる?

生と死のドラマがそこにあり
泣こうが笑おうが幕は下りる
俳優は去って 沈黙がくる
あとには書割りが残るばかり

そこにあるのは 愛と死のドラマだ 
きみは舞台でたたかい抜いたか
こころみちたりて去ってゆけるか
それこそがいまのきみの問題だ

そうしてきみも思いみるがいい 
そんな感情の地獄などではない 
ほんとうのこの世の生き地獄を 
ヒロシマ・ナガサキの核地獄を

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