きみのいないうつろな部屋は

ここでは、「きみのいないうつろな部屋は」 に関する記事を紹介しています。


きみのいないうつろな部屋は
                     大島博光

きみのいないうつろな部屋は
あの暗鬱な牢獄にも似ている
壁のなかから洩れてくるのだ
あわれな死刑囚の呻めき声が

きみのいないわたしの庭は
見捨てられて廃園となった
アジサイもアザミも咲かない
池にはもう金魚も鯉もいない

きみのいないわたしの書斉は
火砕流にのみこまれた空想美術館
マイヨールのトルソーもない
ロダンの抱擁のかけらもない 

きみのいないわたしの広場に
守護神を失った市民がひとり
どこに安らぎをもとめようか
しょんぼり途方に暮れている

きみのいないわたしの森を
からからと風が吹き抜ける
木の葉も小鳥もとびさった
からっ風に枯枝が軋むばかり

きみのいないわたしの岸べは
泳ぐひととていない冬の海だ
浜べには錆びついた廃船ひとつ
夏の日のさんざめきは遠い

きみのいないわたしの山は
もう草も木も生えない禿山
雲も湧かない泉も湧かない
峠を越えてそよ風も吹かない

きみのいないわたしは岩登りで
すばらしい相棒を失った山男だ
頂上の下の岩壁に宙吊りのまま
登ることも降りることもできぬ

わたしの灰色の空を破って
春の日の明るいきみの微笑みが
太陽のように射してくる
それだけがわたしを生きさせる 
                 一九九三年四月 

関連記事
コメント
この記事へのコメント
こんにちは。
スペースお借り致します。

お友達がたくさん出来て、投稿に参加する度ごとに直筆のカード式のファンレターが3~30枚以上届く文芸サークル(投稿雑誌)をやっています。
ネットでのやりとりも楽しいですが、ぬくもりが伝わるアナログでの活動は温かい気持ちになり、楽しさや幸せをより感じられます。
イラスト・詩・漫画・小説・エッセイなどジャンルを問わず何でも掲載しています。
月刊で100ページくらい。全国に約120人の会員さんがいます。
あなたがブログで発表している作品を雑誌に掲載してみませんか?
東京都内で集会も行っています。お友達や創作仲間作りにご活用下さい。

興味を持たれた方には、現在雑誌代と送料とも無料で最新号をプレゼントしています。
よろしかったらホームページだけでもご覧になって下さい。
ホームページにある申込フォームから簡単に最新号をご請求出来ます。
http://www2.tbb.t-com.ne.jp/hapine/

これからもブログの運営頑張って下さい。
失礼致しました。
2017/08/09(水) 14:29 | URL | つねさん #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/3373-c29ae5db
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック