「ジャンヌ・マリーの手」 2)五月二十八日

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2)五月二十八日
 ジュール・ヴァレースは、戦闘末期のパリの街の夢のような美しさと残酷さとのいりまじった光景をつぎのように歌っている。

   五月二十八日

 五月二十八日 戦いはまさに終ろうとしていた……
 熱い大地と煙のたちこめる空の間に 敗残兵のおれは
 ふと立ち停った 蒼ざめ 疲れ 血にまみれ……
 そうやって ただひとり 立ちつくしていたとき
 深い静けさのなかから 物音が聞こえてきた
 反射的に おれは頭をもたげてみた……すると
 バルコンのうえに肘をついた なまめかしく
 青い眼をした金髪の女がひとり 眼に映った
 女と敗残兵とは 二人ともじっと見つめ合った
 彼女は 結び玉のついた 赤いガウンを着て
 カーネーションをさした帽子を 斜めにかぶっていた
 それは一瞬の光であり炎であり 稲妻でしかなかった
 あたりの澄んだ大気をひき裂いて 声が聞こえた
 おれには 壁にかくれるひましかなかった
 撃て……と叫んだのは ヴェルサイユ軍の兵隊だった
 いまもおれには あの青い眼の光が見えるようだ
 鉄砲の弾丸(たま)に赤く射抜かれた あのガウンが
 死臭のただよう大気のなかの あの晴着姿が
 砦(とりで)のうえの あのなまめかしい姿が 見えるようだ
 そしていまも 彼女の姿を 思い浮べると
 硝煙の匂いと彼女の花の匂いが 入りまじって匂ってくるのだ

(つづく)

(新日本新書『ランボオ』)

地の週間
「血の週間: 21-28 mai 1871 」('Dictionnaire de la Commune' 1971)


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