きみもきのうは

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きみもきのうは
                大島博光

きみもきのうは 若者だった 
もやもやした胸を抱いて
夢みる眼をした 若者だった

きみは飢えていた 渇いていた
泉や塩を さがしもとめて
獣のように うろついていた

きみも 禅寺で 座禅を組んだ
教会に行って 説教も聞いた
だが もやもやは はれなかった

きみは 吹きっさらしの荒地に
癒しをもとめ 救いを叫んだ
こたえてくれる こだまはなかった

きみは 道をさがしあぐねて
泥んこ道にはまりこんだり
意地わるな石につまずいたり

この世の中の仕組も見えず
善と悪との見分けもつかず
霧のなかをさまよっていた

生きる道も目的も見いだせず
海のものとも 山のものとも
つかないままに 漂っていた

すとん狂なこと 突飛なことを
口にもしたり やってものけた
それが 詩人のあかしのように

アナーキーな反抗に酔って
子供じみた愚行も演じた
靴でビールをあふって飲んだ

愛する女(ひと)にもめぐり会わず
ひとを愛する意味も知らず
愛の砂漠をほっつき歩いた

夜ごと新宿裏をぶらついて
酒場の灯かげに 酔いくずれて
きみは青春をむた使いした

きみもきのうは 若者だった
やぶれかぶれの やけっぱちな
明日をもたない 若者だった

                一九九五年

(自筆原稿)
<「大島博光詩集1995〜2003」>

子ども


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