5)「苦しみの武器」──ガブリエル・ペリ
一九四一年十二月十五日、ガブリエル・ペリがモン・ヴァレリアンにおいて人質として銃殺された。──彼はフランス共産党中央委員で、代議士で、下院の外交委員会の副委員長として、ファシズム体制に投降する政策に反対し、ファシズムにたいする仮借なき批判者であった。処刑の前夜、ペリはのちに有名になる遺書を書く。
「わたしは最後にもう一度、じぶんの良心をふりかえってみた。少しもやましいことはない。もしも、もう一度人生をやりなおさねばならぬなら、わたしは同じ道を行くだろう。わたしはやはり今夜も信じている、『共産主義は世界の青春であり』『それは歌うたう明日の日を準備する』と言った、親愛なるポール・ヴァイヤン・クーチュリエの言葉の正しかったことを。わたしはまもなく『歌うたう明日の日』を準備するだろう。さようなら。フランス万歳!」
その英雄的な死を讃えて、アラゴンは「責苦のなかで歌ったもののバラード」「ガブリエル・ペリの伝説」を書いたが、エリュアールもまた簡潔で感動的なペリ像を描いている。
身を守るために生にむかって開いた
二本の腕しか持たなかった男が死んだ
鉄砲を憎むという道以外の
ほかの道をもたなかった男が死んだ
男は死んだが死に抗し忘却に抗して
彼はいまもたたかいつづけている
……
ひとを生きさせるような言葉がある
それは無拓な言葉たちだ
温かさという言葉 信頼という言葉
愛 正義 そして自由という言葉
子供という言葉や思いやりという言葉
そしてある花々の名前や果物の名前
勇気という言葉や見つけるという言葉
兄弟という言葉や同志という言葉
そしてある国や村むらの名前
そしてある女たちや友だちたちの名前
そこにペリの名を加えよう
ベリはおれたちを生きさせるために死んだ
彼とおれおまえたちで話そう 彼の胸は射(ぶ)ち抜かれた
だが彼のおかげでおれたちは互いをよく知る
おれたちはおれおまえで話そう 彼の希望は生きている
(『苦しみの武器』──「ガブリエル・ペリ」)
ここでは、選ばれた言葉、固有名詞、イメージが、状況を的確に反映している。
(つづく)
(新日本新書『エリュアール』)
一九四一年十二月十五日、ガブリエル・ペリがモン・ヴァレリアンにおいて人質として銃殺された。──彼はフランス共産党中央委員で、代議士で、下院の外交委員会の副委員長として、ファシズム体制に投降する政策に反対し、ファシズムにたいする仮借なき批判者であった。処刑の前夜、ペリはのちに有名になる遺書を書く。
「わたしは最後にもう一度、じぶんの良心をふりかえってみた。少しもやましいことはない。もしも、もう一度人生をやりなおさねばならぬなら、わたしは同じ道を行くだろう。わたしはやはり今夜も信じている、『共産主義は世界の青春であり』『それは歌うたう明日の日を準備する』と言った、親愛なるポール・ヴァイヤン・クーチュリエの言葉の正しかったことを。わたしはまもなく『歌うたう明日の日』を準備するだろう。さようなら。フランス万歳!」
その英雄的な死を讃えて、アラゴンは「責苦のなかで歌ったもののバラード」「ガブリエル・ペリの伝説」を書いたが、エリュアールもまた簡潔で感動的なペリ像を描いている。
身を守るために生にむかって開いた
二本の腕しか持たなかった男が死んだ
鉄砲を憎むという道以外の
ほかの道をもたなかった男が死んだ
男は死んだが死に抗し忘却に抗して
彼はいまもたたかいつづけている
……
ひとを生きさせるような言葉がある
それは無拓な言葉たちだ
温かさという言葉 信頼という言葉
愛 正義 そして自由という言葉
子供という言葉や思いやりという言葉
そしてある花々の名前や果物の名前
勇気という言葉や見つけるという言葉
兄弟という言葉や同志という言葉
そしてある国や村むらの名前
そしてある女たちや友だちたちの名前
そこにペリの名を加えよう
ベリはおれたちを生きさせるために死んだ
彼とおれおまえたちで話そう 彼の胸は射(ぶ)ち抜かれた
だが彼のおかげでおれたちは互いをよく知る
おれたちはおれおまえで話そう 彼の希望は生きている
(『苦しみの武器』──「ガブリエル・ペリ」)
ここでは、選ばれた言葉、固有名詞、イメージが、状況を的確に反映している。
(つづく)
(新日本新書『エリュアール』)
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