四角い額ぶちのなかの
大島博光
わたしがいま腕に抱いているのは
四角い額ぶちのなかのきみだ
きみが描いた自画像のきみだ
病むきみは震える手で描いた
色を塗りこめて 色を重ねて
きみ自身の血と肉の色を
たっぶりと 働いて愛した
愉んで生きた 女の像を
太陽の娘だった名残りを
わたしには いま腕に抱いている
四角い額ぶちのなかのきみは
あの春の日の花嫁のままだ
生きがての世をたたかい抜いた
きみが世に残したきみ自身
額ぶちのなかで きみは死なない
一九九五年六月
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