『エルザの眼』(11)エルザへの讃歌 1 序曲

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オーボエ


(『アラゴンとエルザ 抵抗と愛の讃歌』)

ピアノ




  エルザへの讃歌

 1 序 曲

おれはおまえに触(さわ)る おまえの体(からだ)を見る おまえは息をつく 
もう 離ればなれに暮らした時期は 過ぎ去ったのだ
行ったり来たりするのはおまえだ そしておれは
  よかれ あしかれ おまえの領土なのだ
しかもおまえがこんなに遠く思えたことはなかった

おれたちは 不思議の国でいっしょに
絶対の色をした 真剣な悦びを見いだす
だが 二人にもどると おれははっと眼が覚める 
  そして最後の別れを告げるような溜息を
おまえの耳に吐きかけても おまえにはもう聞こえぬのだ

かの女は眠る おれはじっと その寝息を聞く
現にかの女は おれの腕のなかにいるのだが
そこにいながら まるで遠いところにいるようだ
  かの女の神秘に近づけば近づくほど
おれは孤独になる 負けた賽(さい)の目を読む博奕打(ばくちうち)のように

昼の光が かの女をもぬけの殻から引きもどすと
おれをうっとりとさせ さらに美しくなったかの女は
夜の香りと影とを あたりにただよわせて 
  五感まで 夢心地にさせるのだ
昼がかの女を連れもどしても それも一つの夜なのだ

おれたちは 毎日のご馳起を引っ掻きあって取り合い 
人生は 頭にくる歌のように 過ぎ去った 
飽きることない おまえの眼に飢えつづけて 
  おれの空よ おれの絶望よ わが妻よ 
十三年 おれはおまえの沈黙の歌に聞き入ってきたa

あの貝殻が 海の音を宿すように 十三年を 
十三の冬と 十三の夏を 心酔わせながら 
おれは もろもろの妄想に 慄(ふる)えてきたのだ 
  甘く苦(にが)い 恐怖にみちた十三年 
心に浮んだ不吉な影を 払いのけてきた十三年

いとしい者よ 時間はおれたちの背丈には合わぬ 
千一夜も 恋びとたちにはなんと短いことか 
十三年も たったの一日のようだ そうして
  おれたち二人のわび住居 足もとの 
魔法の絨毯をめらめらと焼きつくす薬のようだ

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