硫黄島

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硫黄島

硫黄島
硫黄島3


(『角笛』1952年2月、詩集『ひとを愛するものは』)

海





 硫 黄 島
                    大島博光

戦争
それは 
水もない孤島の灼けた砂のうえ 
名も知らぬ草むらのかげで 
海の太陽に焼きつけられ 
スコールにたたかれる 
おれたち 野ざらしのどくろだ
散らばった骨のかけらだ

知るべひとりいない
孤島の闇の底で
夜も閉じることのない
おれたち眼のない骨の洞(うろ)を
口のない顎骨(あご)の洞を
吹き抜けるのは暗い潮風ばかりだ

母よ父よ
子供たちよ妻よ
恋びとよ弟よ
おれたちも もっと生きたかった
生きてきみたちと一しょに笑いたかった
おれたちの生命はきみたちのためにこそあったのに
こんな孤島におれたちを駆りたて
こんなどくろに変えたのは誰か
しかも きみたちの暮らしのなんという惨めさ
おれたちも働きたかった 闘いたかった
しかしきみたちに頬ずりする頬肉はもう
おれたちにはない
誰がきみたちの涙を拭いてくれよう
しかし むだに流してはならぬのだ きみたちのその涙は
そうして おれたちも眠りたかった
きみたちのそばで
きみたちの暮している土のうえで

眠るに眠れず
おれたちがまだ呻き叫んでいるのに
あのいまわしい軍靴の音が
またきみたちの耳に鳴りひびくとき

思え 思い出せ
戦争
それは
どくろになったおれたちだ
野ざらしの骨のかけらのおれたちだ
そのおれたち眼のない骨の洞(うろ)で訴えるまなざしだ
口のないおれたち顎骨(あご)の洞からあげる呻き声だ
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