人間たちの歌を

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人間たちの歌を


(『詩学』 1950年1月号)


雪




人間たちの歌を    大 島 博 光

かつて わたしは歌っていた
夜の歌を 暗い夜の歌を
夜のなかの孤独の歌を

わたしは歌っていた 夜のまぼろしを
貝殻になかに閉じこもった貝のように
自分の闇のなかにうずくまって

貝殻のそとはもっと暗かった
暗くてひどい嵐が吹きすさんでいた
貝殻がわたしを守ってくれるとおもった

わたしは知らなかった
そとの暗闇こそがわたしの夜であり
わたしを貝殻のなかに閉じこめていたのを

わたしは知らなかった
わたしの暗い夜の歌が 孤独の歌が
奴隷のかなしい歌ごえに似ていたのを



人間の歌は 人間をまもる歌ごえは
貝殻の闇のなかでつぶやくべきではなく
風のなかに歌い叫ばねばならぬのを

わたしたちのそとはまた暗くなってきた
暗くてひどい嵐が吹きはじめてきた
だが わたしはもう 貝殻に閉じこもらないだろう

ひとびとはわたしに教えてくれた
嵐の夜のあとにきっと朝のくることを
わたしたちは決して孤独ではないことを

そうしてひとびとは待っている
自由を歌いさけぶ詩人の声を
愛と憎しみを歌いつげる詩人のくちびるを

そうしてわたしは歌うだろう
夜の歌ではなく 夜明けの歌を
夜明けをたたかいひらく人間たちの歌を


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