二月の風

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二月の風


(『日本抵抗詩集』1953年、『大島博光全詩集』)


二月の風

裸の雑木林が髪をふり立てる
にわとりの胸毛がめくれふるえる
踏切番がはためく信号旗をにぎり直す
おお 二月の風が吹いてきたぞ
地平いっぱいうなりをあげて
シベリアの方から吹いてきたぞ

裏通りのものほし竿にぼろがひるがえる
電線にひっかかった破れ凪が身もだえる
おお おれたちの風 二月の風は
駅前広場に立ち上った若ものたちのその髪になびく
砂っぽこりがつっ走る街角から
ひったてられてゆく仲間たちのそののどにふるえる

おお 二月の風 吹きまくれ 吹きとばせ
暗い暗い冬を
おれたちの空をふさいでいる飛行機雲を
硝煙や血の匂いばかりする夜々を
おれたちの米と畑を奪いとる吹雪よりも白いやつらを

ソリ曳く馬のたてがみがなびく
選炭所の塔がゆらぐ
おお 二月の風 吹きこめ もち込め
ひんやりした新鮮なオゾンを 春を前ぶれる息吹きを
ガスくさい坑内へ 穴倉へ
雪に閉じこめられた藁屋根の下へ
疲れたおれの血管へ

水の面がささくれ立つ
枯草がひょうひょうと鳴る
おお 二月の風 吹き起せ あふり起せ
凍てついた河原の砂利を掘りくだき
破れた肩にモッコをかつぐ仲間たちの
その流木やアカシャを積んだ禁火の炎を
そうして呼びさまし 呼び起せ
枯草の茂みの中から雲雀たちを
霜柱の下からたんぽぽを
くぬぎの枝から赤芽の一つ一つを
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