ネルーダ 愛の詩 百の愛のソネット(16)九七番めのソネット

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 詩人はまた、死後についてユーモアにみちて夢想する。

  そのとき どこへ飛んでゆかねばならぬのか
  羽根もなく 飛行機もなく ためらうこともなく
  もう 足音も むなしく 消えてしまった
  もう 足をあげて 旅ゆくこともないのだ

  鷲がとび 縄がとび 日日が飛びさるように
  のべつまくなしに 飛んでいなければならぬ
  サトゥルヌスの眼よりも もっと高く飛んで
  その高みに 新しい鐘楼を 建てねばならぬ

  もう 靴も道も そんなものは用をなさぬ
  この放浪者たちには もう大地も役立たぬのだ
  根も 夜をよぎって さまよってゆくのだ
                   (九七番めのソネット)

 これら、ネルーダの死についての深遠なファンタジーは、アラゴンの『エルザの狂人』のなかの、おなじく死と未来について歌ったファンタジーを思い出させる。アラゴンはこう歌っている。

  砕けたさかずきから こぼれ流れる酒のように
  姿かたちもないわたしの亡霊は どこへ急ぐことやら
  土の重みにおしつぶされた すみれの花の
  ほの暗い香りに酔って わたしの足は千鳥足

  もう夜もふけて ひいらぎの茂みも静まった
  いまはもう 亡霊たちが手をつないで踊るとき
  いつ何時でもいいのだ どこへなりとかまわぬのだ
  小さな穴さえあれば 降りてゆくのに事足りるのだ
                        (『火』)

 アラゴンの亡霊が、大地の下を千鳥足でさまようのにたいして、ネルーダのそれは、土星よりも高く、「のべつまくなしに飛んで」いるのもおもしろい。その時にもなお、二人の詩人は「愛を抱きつづけている」と歌っている。

(つづく)

<『愛と革命の詩人ネルーダ』>


97番目のソネット


夕空

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