静江の久しぶりのラヴレター(2)

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 「千曲川旅情の歌」にはじまった三十六才の詩人と二十二才の乙女の旅が、いざよう波に貴方はゆられただよい川底をくぐりぬけ、わたしはよくも泳ぎ切って、はるか彼方へ来りしものかな……。いぶし銀のようなたそがれ色のメロディーをあなたは口ずさみながら、桑畑をくぐり麦畑の上に髪をなびかせながら、自分自身のうたに涙をうかべながら、プシを待っていてくれたこともあった。
 世界中で一番、何よりも美しい私の黄金の詩人は、波にもまれてもさびない竿。奥の奥の純金は私が一番よく知っている。もう扉を叩きます。あせらないでもいい、いや、あせって、純金のひびきを、かすかづつ、そしてひびき高く、鳴らしはじめて下さい。私達の黄昏を、今迄になく美しく期待に満ちた最期を うたいはじめて下さい。
 あなたは黄昏の光が好きなのだから、あの美しい石切り場や戸隠の黄金いろの夕やけを格調高くひびかせて下さい。
 私には何もできない。子供たちも。出来るのは貴方だけでせう。詩を、美を、芸術を、残す事の出来るのは。
 私には馬車馬の値打しかなかったのだから、それでいい。かよわい詩人は馬車馬に引きづりまわされてきてしまった。でも、これからは雑音にまけない純金で、音をかき鳴らさなくてはいけない。おそすぎたけれど わずかな期間の故に、又より美しくかけがえのない涙をうたいあげて下さい。
    二十七日朝 小鳥の鳴き声をききつつ。

石切場


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