心のなかのスペイン──帰国

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 帰国

 スペイン人民戦線を支援したという理由で、ネルーダを領事から解任したチリ政府は、一年後の選挙の結果、チリ人民戦線公認候補アギレ・セルダが大統領となる。新しい政府はスペイン人民戦線の亡命者たちをチリに受け入れることを決定し、その任務をネルーダに託した。かれは数千人の亡命者を乗船させ、一九三九年の終り、フランス船「ウィニペッグ」号でチリに到着する。ネルーダも帰国する。のちにかれはつぎのような詩を書く。

   恐らくそのときだわたしが変ったのは

  わたしは祖国に帰ってきた 戦争が
  わたしの眼の下に入れた
  ちがった眼をもって
  ほかの人びとの涙と血にまみれた戦火のなかで
  焼かれた ちがった眼をもって
  そしてわたしは この世の仕組の厳しい奥底を
  さらに深く さらに遠く見つめ見とどけようとした
  ……
  とつぜん さまざまのアメリカの旗が
  わたしの眼に見せつけた
  国ぐにのありのままの領土を
  畑や路上の貧乏な人びとを
  おびえた農民や死んだインディオたちを
  それから 銅や石炭の出る鉱山の
  地獄のような巨大な坑道を
  しかし もろもろの共和国の内部では
  それがすべてではなかった
  上の方には 大仰にも
  尊大にふんぞり返った冷酷な男が
  犠牲者たちの血に汚れた
  たくさんの勲章を胸に飾っていた
  また上流のクラブの紳士どもは
  優雅な暮らしの羽根のなかを
  もの思わしげに往き来していた
  その一方 しがない哀れな天使や
  つぎはぎだらけのぼろを着た哀れな男は
  石から石へと歩いてきたし いまもまだ
  裸足で 空きっ腹をかかえて歩いているのだ
  彼はどうしたら生き残れるのか だれも知らない   (『イスラ・ネグラの思い出』)

(この章おわり)

(新日本新書『パブロ・ネルーダ』)

ジーンズ

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