心のなかのスペイン──「そのわけを話そう」

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 「そのわけを話そう」

 ファシズムの暴虐をまのあたりに見て、ネルーダが最初のヒュマニスムの声、怒りの声をあげる。それが有名な「そのわけを話そう」という詩である。

  きみたちは尋ねる──リラの花はどこにある?
  ひなげしに蔽われた形面上学は?
  そして空白と鳥たちにみちみちた
  言葉の雨は どこにある?
  わたしは何が起きたか それを話そう
  ……
  兄弟よ
  市場の広場には 塩が積まれ
  焼きたてのパンの山があり
  屋台には 魚がならび
  ……
  ある朝 大地からまっ赤な火が吹き出し
  ひとびとをなめつくした
  そのときから 戦火が燃えあがり
  そのときから 血が流れた
  悪党どもは飛行機にのりモール人をひき連れ
  悪党どもは指環をはめ 公爵夫人たちを連れ
  悪党どもは祝福をたれる黒衣の坊主どもを従え
  悪党どもは空からやってきて子供たちを殺した
  子供の血が街じゅうに
  子供の血として流れた
  ……
  きみたちは尋ねる──なぜわたしの詩が
  夢や木の葉をうたわないのか
  故国の火山をうたわないのかと

  来て見てくれ 街街に流れる血を
  来て見てくれ 街街に流れてるこの血を!    (『心のなかのスペイン』)

 ネルーダは初めて状況の詩を書く。「ひなげしに蔽われた形面上学」の詩のかわりに、戦火に焼かれる家を──街に流れる血を書く。かれは説明し、「兄弟たち」と呼びかける。詩のなかで対話を始める。かれは生ける現実のスペインを描くために、日常のスペイン──家、街、市場を、抑制のきいた詩句で描く。戦争が人間を殺しているとき、詩もまた安閑としてはいられない。「故国の火山」を歌っているときではない。では、この連帯の新しい詩はどのようにして成り立つのか。「ゲルニカ」におけるピカソのように、ネルーダもまたファシズムの暴力をあばき、告発する。彼は廃墟を調べ、その詳細な目録をつくりあげる。悲劇を世界に告げ知らせるだけでは充分ではない。ファシズムという敵にたいする憎しみを叫ばなければならない。こうして叫びは呪詛となり、激昂へと高まる。

  山犬にさえ侮蔑される この山犬ども!
  のどの渇いたあざみさえ
  噛みついてもつばを吐きかける この石ども
  蝮(まむし)にさえ嫌われる この蝮ども!   (「そのわけを話そう」)
(つづく)

(新日本新書『パブロ・ネルーダ』)

夕焼け


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