雪の野

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 雪の野
            大島博光

まっ白い雪の野に、
まっ黒いからすが舞いおりて
餌さをほじくり、あさってる。

雪に埋(う)もれた右手の部落
静かなわら屋根のしたは大騒ぎ──
秋には芋を七萬貫もよけいに供出したのに、
こんどはまた米を百七十パーセント供出だ。
なんぼなんでも、そんなに出るものか、
村長や供出係が、手をもみもみ、
地方事務所にたのんでみたが、
よけいに出した七萬貫をさっ引(ぴ)いてはくれぬ。
つよい農民組合のない悲しさ、
村じゅうが、ただ手もなく騒いでる。

戦争で夫を殺された後家さんが、
女手ひとつで、ようやくとり入れたその米を、
じぶんでも食うや食わずに、
勝手な、安いねだんでとられてしまい、
もうどうしてよいやらわからずに、
ただもう、おろおろしているばかり……

まっ白い雪の野に
まっ黒いからすがまいおりて、
えさをほじくり、あさってる。

雪にうもれた左の部落、
ここの集会所も大騒ぎ、
だが、農民組合の寄り合い騷ぎ
供出を正当に出した、完了祝い。

ここの村にもひどい割当て
そこで農民組合はワッショイ、ワッショイ
地方事務所へデモかけて、
自主供出をかちとった、
大衆と団結のちからで。

そこで、いろいろ話がはずむ、
──となり村の連中は、おれんところの組合を、
赤だなんぞとほざいたくせに、
それ、見ろ、あの今のざま、
モチ竿のモチにかかった雀そっくり、
それも、自分からモチにかかって、羽根をとられ、
ただ、チィチィ、鳴くばかり

まっ白い雪の野に
まっ黒いからすがまいおりて
えさをほじくり、あさってる。

 (『勤労者文学』 一九四八年四月)

*『勤労者文学』は1945年12月に発足した新日本文学会の文学雑誌。博光は中央委員となり、長野支部結成のために壺井繁治を長野市に呼んで座談会を開くなどした。(青山伸「戦後・長野県詩人の活動 北信地方」『長野県年刊詩集』1960)

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