『ウラル万歳!』(下)

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 この沈黙の七年間は、『断腸詩集』の新しい表現形式をみいだすにいたる、詩人としての人間としての追求と模索の過程だった。それには党の書記長トレーズとの出会いも幸いしたようである。一九三三年、ソヴェト滞在から帰ってきたアラゴンは、初めて党の書記長モーリス・トレーズに会った。トレーズはそれまで党内の団結をさまたげていたセクト主義、労働者万能主義、極左主義などを一掃する政策を実施して、それまでアラゴンのような知識人党員には耐えがたかった党風を一新したところだった。さらにトレーズは、アラゴンの大いなる善意、その資質を敏感に評価して、彼を党内の強力な一グループに加える。党を豊かにし、党の民族的役割を発揮するには、その時代のもっとも優れた人物の入党が必要である──トレーズはそう考えるにいたる。党の民族的役割というのは、国際主義の「インタナショナル」とフランスの歌「マルセイエーズ」を一つに結びつけるという有名なトレーズのテーゼである。こうしてアラゴンは、トレーズの激励のもとに、詩における階級的立場とは対極にあると思われていた民族的遺産を継承し、民族的形式を発展させるという考えを次第に大胆に推しすすめる。この政治的確信こそは、その後の戦争、占領、レジスタンスという状況のなかでの、アラゴンのめざましい詩的開花にとって恐らく決定的なものであっただろう。アラゴンの天才が花ひらくこの詩的突然変異は、長いあいだに練りあげられたものであり、長いあいだの詩的および政治的な準備作業によって可能だったのである。
(この項おわり)

新日本新書『アラゴン』

ポンヌフ
ポンヌフ

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