ネルーダ 愛の詩 百の愛のソネット(10)

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 しかし、愛のよろこびも、しあわせな愛も、人生から遠くはなれた桃源郷に住んでいるわけではない。不幸や憎しみが、嫉妬や不義不正が、つねに愛をおびやかし、狙っている。

   棘や 割れたグラスや 病気や 涙などが
   昼となく夜となく 幸福の蜜を狙っているのだ
   塔も 旅行も 壁も なんの役にもたたない
   不幸は忍びこむのだ ひとの安らかに眠ってる間(ま)に
                     (五五番めのソネット)

 しあわせな二人の恋人たちも、愛の苦悩、愛の試練をまぬがれることはできない。愛もまた生きているのであり、生きているものは、いやでもおうでも矛盾のなかに生きているのだから。傷ついた恋びとたちは、矛盾の解決をさがしもとめる。

   おれたちも二人で 一生懸命 探しもとめた
   もう汐も おまえの髪にさわらないような穴を
   おれの過(あやま)ちで 痛みが大きくならぬような星を
   胸えぐる 苦しみなしに生きられる場所を
                     (七一番めのソネット)

 だが、そんな場所はこの世のどこにもない。また、あのロマンティックな個人主義が夢みるように、この世の外に逃避することもできない。いかに苦しかろうと、愛のすみかは、この地上のほかにはないからである。

   傷つくことも苦しみもない 隠れた堅固な巣を
   だが 愛はそんなものではなく 人びとが露台(バルコン)で
   顔蒼ざめさせるような 気狂いじみた町だったのだ
                    (七一番めのソネット)

 愛はまさに「気狂いじみた町」なのだ。愛ほどに、みずからのうちに狂気を秘めているものはない。そしてまた、マチルデの詩人ほどに、情熱的な恋びとも少ない。

   いつ どことも どのようにとも知らずに おれは愛する
   ためらいも誇りもなく まっしぐらにおまえを愛する
   それがおれの愛し方だ ほかの愛し方を知らぬのだ
                    (一七番めのソネット)
(つづく)

<『愛と革命の詩人ネルーダ』>


ソネット


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