閉じられた窓

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 閉じられた窓    青山伸

むかいの整形外科病棟の窓に
髪を肩にたらし いつも
左の横顔しか見せない少女がいた

タンポポの芝生をなでてくる風が
僕の髪をふるわすのにたまらなく
半身をベッドに起して
窓から顔をだすと きまって
少女は青白い手で
曇りガラス戸を そっとしめた

 ある日 看護婦さんがささやいた
 広島の方なの
 右頬がひきつれて耳がないのよ

退院近い日
足音しのばせ 松葉杖ついて
長い間 閉じられたままの
窓の下の芝生を歩いてみた
ガラスに赤い花の しおれた影が映って
なかは ひっそりしていた

こうして びっこをひかなくなった僕は
原水爆禁止長野県大会の会場で
長い髪にかくされた少女の頬をおもい
僕は今 署名簿にむかう

詩集『きのこ雲』1956年6月)

白バラ

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