壇 上

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 壇上     青山伸

ひろしまの 廃墟に生えた 若木のように
あたしの白い胸も 荒地をもたげ まるく芽ばえたけれど
頬と心の傷ぐちは 十三才のまま
原爆記念堂の 瓦礫のようでした

そうして きずつかなかった やさしいお友だちが
あたしにだまって お嫁にいったとき
悲しみを 大きなマスクでおおい
人影をよけ 暗い裏道を歩きました

いつのまにか 死んでいた 母によりかかって あの時
この川岸で あたしも星となっていればよかったと
夜露にぬれて たたずみ
川原の草をちぎっていました

思ったものは あたしひとりだけの世界
ねがったものは すべての人がみにくくなること
街角にてる 太陽をうらみ
月のない夜の露路を愛しました

あれから十年 原水爆禁止世界大会へ
あたしはいやいや 壇上につれだされたけど
世界中からきた人びとの いのりとねがいは
悲しみがあきらめとなった 傷ぐちをあらう

あたしを愛するひとが たとへあらわれても
放射能や かたわが つたわるのでは
あたしは子供を産みたくない
こんな苦しみは もうあたし一人で沢山なの

あたしへの あわれみは ありがたいけど
唇をとじても見える歯が
平和のために お役にたつのでしたら
皆さん ニュースのライトを止めさせないで

動かない まぶたからこぼれる涙に
フラッシュは明るすぎるけれど
水爆をつくる人たちの前に
どうぞあたしを 連れてってください

(『角笛』13号 1955年9月、詩集『きのこ雲』1956年6月)

ポールヒマラヤン
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