ネルーダ 愛の詩 百の愛のソネット(2)

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 ネルーダは、あらゆる気どった素材をなげ捨てて、もっとも自然な、木材という素材でソネットをつくる。木材などというものは、きらびやかな金銀細工の装飾品などには役立たない、きわめて素朴なものである。しかし、ネルーダが木材というとき、それはかれの本質をかたちづくっているものの一部分であり、テムコの森であり、チリの自然なのである。したがって、木材で愛の家を建てるという発想は、たんなる暗喩や修辞をこえて、深くネルーダの内面に根ざしているのである。テムコの森ですごした少年時代を思い出して、かれは『家』という詩でこう書いている。

   わたしの家は切りたての丸太の壁で
   木の香も新しくまだ匂っていた
                 (『大いなる歌』)

 また『イスラ・ネグラの回想』のなかではこう書いている。

   わが家の羽目板は
   すがすがしい森の
   木の香が 匂っていた
   そのときから わたしは
   大工が好きになったのだった

 この木の香、樹液の匂いは、ネルーダの詩のいたるところにただよっている。それは、生命の生長の秘密をひめた、自然の偉大なエネルギーの象徴でもある。ネルーダは、それをまた「木材」という物のなかに見ているのである。人間はある意味では、樹木の息子であるという、長い人類の歴史をかれは思い出し、人間の生命と植物の成長繁茂との類似を見ている。かれの追求する生命生成の詩では、ひとり木ばかりでなく、石や金属でさえも自分の場所をもっていて、けっして死んだ物質ではない。かれの詩の根もとのところに横たわっている、こういう思想には──あるいはこういうマテリアリスムには、古代アメリカ伝承のアニミスムの匂いがまつわりついている。
(つづく)

<『愛と革命の詩人ネルーダ』国民文庫 1974年>

森

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