抱擁

ここでは、「抱擁」 に関する記事を紹介しています。
 抱 擁
                  福田律郎

男は灌木の道を通りすぎる僕を見た
男はおなじ道を通りすぎる君を見た

いま僕の腕に抱かれているのは愛されるための体
やや 上体を捻じまげているのは
木漏れ陽を気にして ちょっとよそみした君をその姿勢のままで抱きかかえたからだ
確認!
これが二人の最上の生き方
君の声を僕の歌にかえる
僕の声を君の歌にかえる
この樹の上の小鳥のような単純さ!

ここは二人が選んだ場所
あたりにパンジーが美しい
禁ぜられた沼
枯葉の先で解ける冬 濡れた土橋
樹々はわずかに合図して縦横すこしの乱れもなく斜面を下りてくる 二人の方へ
だが ふいに近づくのをためらう
君の手が 僕の肩から胸にすべったからだ
そのため 僕は君の目にそっと手を当てる
さあ おたがいのひかえめな息を数えあうために
ほんのしばらく そのかあいい目を閉じていなければいけない
さっきの男 二人のあいびきをきっと告げ口するだろう
でも それはそれでよろしい
僕は許すことができる!
だから この真昼 僕は無数の目を背中に受けとめながら
愛されるための体! その顔に僕の顔を重ねる
君の形のいい唇がひらいて 世界がその上に!

(福田律郎詩集『細胞の指』)

バラ


関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/2970-b7c17649
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック