(角川書店『アラゴン詩集』)
一九三二年、アラゴンはふたたびソヴィエトを訪問し、巨大な製鉄所が建設されていたウラル地方を旅行し、詩集『ウラル万歳!』(一九三四年)を書く。それから七年間の沈黙がつづく。そのあいだに、彼は詩人としての内面のたたかいと変革を追求すると同時に、フランス詩の伝統的な詩形式をわがものにし、これを革新しようと探求していた。これらの追究こそが、『断腸詩集』を準備していたのであり、レジスタンスの時代の詩を準備していたのである。すでに、『ウラル万歳!』のなかの「ナディジンスクで処刑された二十七人のパルチザンのバラード」のような詩は、レジスタンスのもっとも苛烈な時代の詩の先どりとして読むこともできる。(飯塚書店『アラゴン選集』第一巻解説)
ナディジンスクで死んだ二十七人のパルチザンのバラード
ルイ・アラゴン 大島博光訳
アルハンジェルスクからアラルの海へ
血まみれの提督 コルチャックは
部下の匪賊(ひぞく)や 貴族どもをひきつれて
ウラルの支配者に収まった
部下の大尉 ビアズムスキーは
今日(きょう)もまた 大漁だった
たくさん殺し たくさん傷つけ
さぞ 満足のことだろう
若者もいた 老人もいた
だが みんな 赤いパルチザン
なかでもナディジンスクの二十七人は
鉄砲とって 撃ちまくった
そこで 歴史の語り草にと
ひとときの 気晴らしに と
大がかりな 刑場がつくられた
いまだかつてないような
だが 息をひきとる最後のときにも
老人も若者も 男も女も
ため息ひとつ 吐かなかった
みんな 未来を見つめていた
二十七人の パルチザンは
ひとり またひとり 首くくられた
兵士も 労働者も 農民もいた
いちばん若いのは 十四歳だった
最後の息に 身をふるわせても
祈りなどは つぶやかなかった
おお おまえたち 死者製造人ども
だが おまえたちは 強くはないのだ
もう おまえたちの剣のうえに
早くも 血が錆びついている
墓場が おまえたちを待っている
弾丸が おまえたちを夢みている
美しく生きた 二十七人のパルチザン
彼らの眼は 光りに溢(あふ)れていた
彼らの髪は いつものように
風になびいて 空に語りかけていた
首くくられた 仲間たちの呼び声に
同志たちは 立ち上り 集まってきた
白色ロシアはうち倒された
そして鴉(からす)が 彼らをついばんだ
暗い空よ 息づまるような時代よ おさらばだ
コルチャックはほろびて 今やレーニンだ
勝ちほこる 赤軍の兵士たちは
街なかで 子供たちに語りかける
兵士たちは 子供たちに語りかける
機械と技術を うんと勉強するんだよ
すると子供たちは 眼を大きくひらく
青い青い 青い青い青い眼を
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