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パリ


静物
ピカソ「静物」


  パリ
                シャルル・ヴィルドラック

世界から切りはなされ 
みずからをも 奪いとられた 暗鬱なパリよ
この うるわしい 五月の夜
おまえの悲しみ 苦しみは さらにきわだつ
ただ うなだれた影ばかりが
声もない大通りを さまよい歩き
網のような 古い街街から
おまえの赤い血は ひいて行った

おまえの息子たちは流刑先で
おまえを想って 涙をながし
おまえの壁のなかで
おまえの身の上を 嘆き悲しんでいる
目の前にいながら 遠い 脱獄囚
おまえは もはやここにはいない
おまえは よそにもいない
暗い窓硝子のかげで
おまえの心のように閉ざした
ほのかなランプの下で
わたしは おまえの鉄の仮面をはぎとり
おまえのほんとうの素顔を 思い出す

わたしは おまえを想い 火を想う
祭りの夜 松明があたりにまき散らされる
燃え残りの火が 踏み消され
そのうえに 泥がかぶせられる
すると 最後の花火が
ぱちぱちはぜて 地面に消え
火の熱い息吹きも 消えはて
ただ きな臭い煙りとなる

だが 朝の風が吹いてきて
燠(おき)火のこころを解き放つと
この 蛆虫のうごめいている
汚辱にみちた場所から
大きな炎が 赤あかと燃えあがり
夜を追い払う 火の手となるのだ

(自筆原稿)


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