おれんとこの細胞

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 おれんとこの細胞

きょうはひとつ、おれんとこの細胞をヒロしよう。
なんしろ、この古くさいむかしの城下町、奥さんたちの井戸端会議にさえ、まだ家柄だの、血すじだのと、いまだに古い過去の影、封建の亡霊が尾をひいている城下町。だがここにもこんど、細胞ができたんだ。それでうれしくてたまらんから、ヒロをするというわけだ。
まず、車職人の北君がいる。まるで中共の若もののように活動するんだ。しっかりした行動的なやつだよ。年はまだ十九だが、よく本はよむ、仕事はする、そのひまん、革命のエネルギイでふくらんでいるようだ。町中にたくさんの赤旗を毎日くばってあるく。集会だの大会にはイの一番にかけつける。
かれにもただひとつ嘆きがある。それはおやじさんと二人で働いているその荷車製造にふれてのことだが、こいつが、手工業でいかんというのだ。もっと早く、近代的な機械をあやつる労働者になりたいというのだ。そうだ、北君、早く人民の近代工場をもたねばならんのだ。
北君、かれはまた、とても愛嬌者で、人真似芝居がうまくて、よくみんなを笑わせる。たとえば、或る指導者の口まね手まねで、やってみせる。
「つまりですな、民主人民政府はですな、」
つぎには全テイの林君がいる。これはまた、なんでもキチンとしなければ気のすまぬ、きまじめで、責任感でこりかたまったような男。
全くもって、タノモシイ同志。理論もゲンミツ、討論もセイカク、わが細胞の名議長、
このジョウダンひとついわないかれ
そのつぎに、うら若き岡村嬢がいる。詩を書いたり、うら若いながら演説はうまいもの、女性解放の尖兵だ。だがこの岡嬢、少しルーズでこまりもの、ときどきレンラクがとぎれたり、やりっぱなし、それもどうやら家庭がわるいらしい。元気をだしてくれ、岡嬢よ。
そのつぎは、山崎君。
学校出のインテリ職工。
疎開工場につとめてる。
このまた工場の組合が、全くの御用組合。
何と、この時世に山崎君のサラリーが手どり五百円。
いくらアジっても、よりつかないと思っていたら、こんど越冬資金闘争をもり立て、ぐんぐん、御用組合をきりくずし、みごとに闘争を勝ちとった。だが、学校出の山崎君、歯切れのよい東京弁はよいが、ちょっと演説が学生調でムズかしく、浮いていたという自己批判。
この田舎町の工場の中にも、山崎君の音頭で『インター』が高らかに鳴り響ひびいたのだ!
   (ノート1946年)

桜堤


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