『ランボオ』2.生地・シャルルヴィルへ(5)ランボオ河岸

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 博物館を出て向うを見ると、「黒いムーズ」河が濃緑の色に流れるともなくゆっくりと流れていた。水量のたっぷりある広い大河で、せせらぎの音をたてて流れるというおもむきは全くない。この対岸に迫るようにして横たわる緑の丘というか台地こそは、アラゴンが「エイモンの四人息子からアルデンヌの地を奪いとることは誰にもできぬだろう」(「涙より美しきもの」)と歌った、伝説にみちた「エイモンの四人兄弟の地」なのである。
 このムーズ河に面したマドレエヌの河岸は、いまはランボオ河岸と呼ばれていて、三、四人の釣りびとがコンクリートのらんかんの上から糸を垂れていた。
 ランボオはこの河岸の家に一八六九年から一八七五年まで住んでいた。「酔いどれ船」はそこで書かれた。ちょっと下流のあたりに船着場があって、むかしは荷物を積んだ船が行き交(か)っていた。ランボオはそれを窓の下に眺めて暮らした。そしてその見なれた風景は、「酔いどれ船」の詩想を若い詩人にあたえずにはおかなかったのだろう。

  おれは 非情の「河」をくだっていたとき
  もう 舟曳きたちに導かれるわが身を忘れはてた
  ……
  おれは 舟乗りたちのことも 気にかけず
  フラマンの小麦や イギリスの綿を運んだ

 ドゥラエの回想によれば、少年のランボオはマドレエヌ河岸から川べに降りて、兄のフレデリックといっしょに、あたりにつないであった舟に乗り、舟をゆさぶって波を荒だてる遊びに興じたという。
 「アルチュールは舟のなかに腹這いになって、波がだんだん静まって平らになるのを見ていた。かれの眼は食い入るように深い水にじっと注がれていた」(ドゥラエ)
 ランボオはそのときもうつぶやいていたのかも知れない。

  おお おれの竜骨よ 砕けろ おれは海へ行こう

 (この項おわり)

(新日本新書『ランボオ』)

ランボオ河岸

ランボオ河岸にて


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