ランボオ「一七九二年と九三年の死者たち(十四行詩)」

ここでは、「ランボオ「一七九二年と九三年の死者たち(十四行詩)」」 に関する記事を紹介しています。


一七九二年と


 七月十日に普仏(ふふつ)戦争が勃発し、十五日に宣戦が布告された。十六日に、政府の御用新聞「祖国」に、ポール・ド・カサニヤックは檄をとばし、「思い出したまえ!一七九二年に諸君は偉大であった」と書く。この新聞はその二日前に、ナポレオン帝制の未来のためには戦争が必要だと書いたばかりで、いまや独裁者の王座を守るために、厚顔にもフランス革命の先人たち、ヴァルミやフルーリュの死者たちまでも引合いに出したのである。憤慨したランボオは、さっそく「一七九二年と九三年の死者たち」を書き、自由のために倒れた英雄たちをほめたたえ、カサニヤックに辛辣な詩句を浴びせる。
(『ランボオ』──普仏戦争・最初の家出)

◇   ◇   ◇

 …フランス大革命史の影響は、

  自由のはげしいくちづけに蒼ざめ、眠る
  一七九二年と九三年の死者たちよ、
  君たちはその木靴で、ふみくだいたのだ、
  全人類の魂と額の上に、重くのしかかったくびきを

 という詩句ではじまる「十四行詩(ソンネ)」や、「鍛冶屋」のなかにあらわれており、これらの詩は、大革命の思い出と讃美とにささげられていると同時に、ランボオの革命的精神を音たかく鳴りひびかせているのである。
(『ランボオ詩集』解説「ランボオの詩についてのノート」)


 十四行詩(ソンネ)
  共和主義者で、ボナパルティストの一八七〇年のフランス人よ、
  諸君は一七九二年の、諸君の祖父たちを思いおこせ……
            ポオル・ドゥ・カサニヤック『祖国』

自由のはげしいくちづけに蒼ざめ、眠る
一七九二年と九三年の死者たちよ、
君たちはその木靴で、ふみくだいたのだ、
全人類の魂と額の上に、重くのしかかったくびきを。

暴動に夢中になった偉大なひとびとよ
君たちのこころは、ぼろ着のしたで、愛情に高鳴っていた、
おお、高貴な愛人「死」が、 ふたたび君らをよみがえらせるため、
古いうねのなかにまき散らした、 君ら兵士たちよ。

君たちの血は、 汚された偉大さを洗いきよめた、
ヴァルミィの死者、 フルーリュの死者、 イタリイの死者たち、
暗く、やさしい眼をした百萬のキリストたちよ。
君たちは「共和国」とともに眠る。だが、おれたちは
今なお国王の下に、丸太ん棒の下のように屈服している。
──このおれたちに、多くのカサニヤック氏が今なお君たちについて語りつづけるのだ。

(『ランボオ詩集』蒼樹社)
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/2797-0247d8ca
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック