ランボオ「戸だな」

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戸だな



   (『ランボオ詩集』蒼樹社 昭和23年10月)


いちょう



 戸だな
            アルチュール・ランボオ 大島博光訳

彫刻(ほり)のある大きな戸棚、古びて、くすんだ
槲(かしわ)の戸棚は、人のいい老人のようだ、
戸棚がひらくと、そのくらがりの中から、
古酒(ふるざけ)のように、いろいろの匂いが流れだす。

この戸棚はいっぱいだ、古びた古物でごちゃごちゃと、
黄いろい、匂いのついた下着の類や、
女や子供のぼろ布(きれ)や、色あせたレース、
怪獣の模様のついたお祖母(ばあ)さんの肩掛。

戸棚のなかにはまだある、飾りのメタルや
白や茶いろの髪(かみ)の束、寫眞帖、
くだものの匂いのしみこんだしおれた花。

おお、昔の古戸棚、おまえはいろいろな物語を知っている。
おまえはたくさんの話をして聞かせたいだろう、
おまえの黒い大きな戸が、静かにひらくと、おまえはぎーとうめくのだ。
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